多摩のほか、八王子や日野、稲城の４市で開業する歯科医師らで構成される八南歯科医師会（菊田高行会長）が今年、創立１００周年を迎えた。歯科医療の知識・技術を高め合う学術団体としての側面をもつ一方で、都民の口腔内の健康を守る存在となってきた。

　同会の拠点となる会館（八王子市長沼町）に残る資料によると、創立は大正時代。八王子に住む12人の歯科医師が立ち上げた八王子市歯科医師会が前身になるようだ。

　現在と比べ、歯科医療が確立されていない時代に知識・技術を高め合う学術団体としての側面をもち、当初から地域住民らに歯の健康を守る大切さを伝える啓蒙活動に力を入れてきたことが資料から伺える。

　そして、日本経済が発展し人口の増加がみられるなか、１９４０年に八王子市南多摩支部と名称を変更。この頃から、八王子以外の歯科医らも会に加わるようになったとみられ、創立50周年を迎えた72年に会員数は１５０人超え。

　その後も、平成初期まで「10年間で１００人」のペースで会員数は伸び続け、３７０人を超える現在の会員数につながる。

　同会の菊田会長は「私が加盟した昭和後期には、学校での歯科健診や市民向けの休日歯科診療を当会会員が担当するのが当たり前のようになっていた。昔から地域貢献を第一にしてきたのでしょう」と振り返る。

「なくてはならない」

　23区のなかには１つの区に複数の歯科医師会が存在しているところもあるなかで、会を４市で構成するメリットは大きいという。

　公衆衛生に関する情報や新型コロナ対策などについて広く共有できるほか、行政など外部団体への発言力が増すことにもつながっている。

　同会が担当し、東京都内でも早期に多摩で始まった障害者を対象とする歯科診療は会のなかで情報が共有され、八王子でも実施することに影響を及ぼしたようだ。「４市で議論できるのは大きい。会の活動を支える役員も特定の人に集中することがなくなる」とそのメリットを菊田会長は語る。同会に休日診療などを依頼する多摩市の担当者は「八南歯科医師会さんはなくてはならない存在と考えている」と話している。