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公開日:2025.12.18

木工芸渡辺さん
市内初 人間国宝に
市、多摩市栄誉賞を贈呈

  • 阿部市長(左)から栄誉賞を受け取る渡辺さん

  • 第65回日本伝統工芸展東京都知事賞受賞作品 黒柿蘇芳染嵌荘箱(くろがきすおうぞめがんそうばこ)「西方(さいほう)の風(かぜ)」

 多摩市在住の渡辺明(雅号:渡辺晃男)さんが10月10日付の官報告示で、重要無形文化財「木工芸」の保持者(人間国宝)に追加認定された。市内在住者初の人間国宝誕生となり、市は11月27日に9人目、芸術分野では初となる多摩市栄誉賞を贈呈した。

 市によると、渡辺さんは伝統的な木工芸の技法を高度に体得しており指物の技法を用いて箱などを作り、象嵌の技法によって、錫線、寄木、染角などの多彩な素材を併用した加飾をほどこすことを得意としているという。作品は、指物による箱の形、木取り、象嵌が一体となって木材の美しさを際立たせるものとして、日本伝統工芸展などで高く評価されており、日本伝統工芸展の鑑査委員を務めるなど、後進の指導にも尽力している。

 渡辺さんは「諦めずに40年続けてきて『こういうものが作りたい』という思いと技術が一致したのかな。自分なりに考えてきたものが結実し、評価されたのだと思います」と今回の栄誉につながった伝統工芸展についての思いを口にした。

芸術分野は初

 市は、渡辺さんに対し、功績が非常に大きく、市及び多摩市民の誇りになることから、その偉業を称え多摩市栄誉賞を贈呈した。

 渡辺さんは「多摩市栄誉賞を頂くことになり大変光栄です。過去にはオリンピックやパラリンピックなど優秀な成績をおさめられた方々8人だけが栄誉賞に選ばれている。芸術分野では私が初めてということで、大変名誉なことで誇りに思っております」と話した。

 栄誉賞を贈呈した阿部裕行市長は「渡辺様は若い時から木工芸の世界の中で鍛錬し、ご苦労もあったかと思います。小さいころから大工か指物師になりたかったということを聞いて夢を実現された。人間国宝はその世界の中で頂点に立たれた方が認定されるもの。市民としても誇りに思います。おめでとうございます」と賛辞を送った。

 渡辺さんは「伝統工芸展19回展を見てこの世界に入ろうと思った。それから工芸展に出品される作品に憧れて、ずっと続けて参りました。その中で、先人たちが残された作品に近づければいいなと思ってきた。伝統工芸展の本展で賞を取るのはなかなか難しい。61回展でやっと受賞できたのも諦めずにずっとやってきたからだと思う」と自身の活動を振り返った。

来年4月に記念事業

 市は、人間国宝認定記念事業として来年4月、作品を展示する展覧会やギャラリートークイベントをパルテノン多摩で開催する予定だという。

 渡辺さんは現在72歳。1976年、千葉大学工業短期大学部木材工芸科卒業。86年に第33回日本伝統工芸展初入選、その後、第61回同展で優秀賞受賞、第62回同展一次監査委員を務める。2019年紫綬褒章受章、24年に第44回伝統文化ポーラ賞優秀賞(木工芸の制作・伝承)、多摩市市民表彰(文化・科学技術)などの実績がある。

市民との触れ合いも

 また、市内にある保育園では椅子やテーブルを制作し、年に一回は園児や保護者、園職員らとメンテナンスを行うなど、市民との触れ合いもある。渡辺さんは「園児にムクの木の良さを知って親しんでほしい」と話し、活動を続けている。

8人が受賞

 多摩市栄誉賞は2012年に創設された。オリパラで活躍した、松本薫さん、岩清水梓さん、阪口夢穂さん、岩渕真奈さん、土田和歌子さん、畠山愛理さん、小俣夏乃さん、吉岡美帆さんが受賞している。

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