多摩ニュータウンの第一次入居地区である諏訪・永山地区。諏訪団地側にある商店街「諏訪名店街」で長く営業を続けてきた和菓子店「青木屋多摩ニュータウン諏訪店」が設備老朽化などにより、5月末をもって閉店する。54年近く続いた名店が無くなることに、近隣住民からは感謝する声や悲しむ声が聞かれた。
東京都西南部の多摩丘陵に位置する多摩ニュータウンは1971年に諏訪・永山地区で入居がスタートし、同エリアは始まりの地とされている。その際、入居住宅とともに作られたのが商店街で諏訪地区には「諏訪名店街」が設けられ、同店が誕生した。
諏訪団地に両親と共に移り住んだ「青木屋多摩ニュータウン諏訪店」/有限会社青木屋代表取締役の永井照章さん(76)は、両親が開いていた和菓子店を手伝うようになった。当初は「新宿中村屋」の屋号で営業し買い物客でにぎわっていたという。その後に、永井さんが府中市に本店がある「青木屋」で修業を重ね、同店の商品を扱う店として生まれ変わった。
親子3人で経営
現在は永井さんと昌子さん(76)夫妻、娘の渡辺亜紀恵さん(49)の3人で店を経営している。
しかし、店内設備の老朽化や従業員の高齢化などを理由に54年の歴史に幕を閉じることを決めた。永井さんは「冷蔵庫、冷凍庫機能のある設備が壊れそうで、昨年には店を閉めようと思っていたが、まだ使えたので今年も続けてきました。だけど突然壊れても困るし店を閉じることにしました」と語る。
近隣住民の高齢化などもあり、設備投資しても利益を出せそうもないというのも理由の一つだという。
常連客に感謝
永井さんは「50年以上も経営しているので、お客様は昔から付き合いのある人ばかり。よく利用してもらいとても感謝してます。閉店を聞いて来店する方もいて懐かしがってくれています」と話す。
結婚を機に約半世紀、店の経営に携わってきた昌子さんは「当時は陸の孤島と言われていたように買い物するにはここ(名店街)しかなかった。肉、魚、八百屋などが揃っていて、買い物する人が多かった。家族のほかにスタッフを雇うほどでしたからね」と振り返る。
同店は映画の舞台として何度か使われたこともあり、以前住んでいた人が上映後に、「映画を見ました」と言って来る客もおり、懐かしがって来店する人もいたという。
和菓子店の常連客は、永井夫妻より年上の人が多く、80代、90代の住民が増えている。娘の渡辺さんは「病院とかに出かける人の中継点のような場所にあり、店頭の椅子に座って休んでいく方もいます。頼ってきてくれるところが店のいいところだった。そういう場所が無くなると聞いて残念がっている方が多いですね」と話していた。
地域から感謝の声
同店を利用していた地域住民からは「亡くなった母は和菓子が大好きで、なかなか売っていない練り切りを頼んで作っていただいた時の、母の感動した姿が忘れられない。沢山の人を笑顔にしてくれました」「何十年かぶりに立ち寄っても、女将さんがまったく変わらない姿に驚きました。多摩ニュータウン当初から、ずっと地域を守ってくださり、ありがとうございました」「子どもの頃、青木屋さんで買ってもらうお菓子やお団子は、別格のおやつでした」など感謝の声が聞かれた。
同店では、諏訪名店街で5月24日(土)に開かれる「すわ新緑まつり2025」を皮切りに、閉店感謝セールを行う予定だという。
![]() 商店街の催しでかき氷を提供する青木屋=同店提供
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