大手出版社・(株)新潮社が昨年に創設し、ベストセラー作家が選考委員に名を連ねた「新潮ミステリー大賞」。記念すべき第1回大賞受賞者となったのが座間市在住の彩藤(さいどう)アザミさん(25)だ。先月22日には受賞作「サナキの森」が刊行され、29日には授賞式が行われた。気鋭の若手作家として活躍が期待される彩藤さんに、受賞作や創作活動について取材した。
同賞は、有名作家を輩出した日本推理サスペンス大賞などの「遺伝子を受け継ぐもの」として企画された。ストーリー性豊かなミステリー小説が対象で、選考委員は伊坂幸太郎氏、貴志祐介氏、道尾秀介氏。東映(株)が後援し、最終候補作品は映像化も検討される。第1回は248編が集まった。
「サナキの森」は「引きこもり」の女性が主人公。小説家の祖父が遺した「帯留めを探して欲しい」という手紙に従い訪れた岩手県遠野市で、80年前の密室殺人事件と、祖父の怪奇小説「サナキの森」の酷似点を発見する。遠野で知り合った女子中学生らと、80年の時を越えた謎解きに挑む。
主人公と女子中学生のコミカルなやり取りを軸に展開する「本編」と、昭和怪談を思わせるグロテスクな事件を旧い文体で表現した作中作「サナキの森」。このギャップが、読み所の1つだ。特に、「暗い話が書きたかった」という彩藤さんの想いが詰まった作中作は「雰囲気があり、よく書けるものだと感心しました」(伊坂氏)と高評価を得た。
29日の授賞式は「ガチガチに緊張して。上手くスピーチ出来ませんでした」と照れながら振り返る。
「面白い作品、書き続ける」
彩藤さんは岩手県の生まれ。小さい頃から読書好きで、中学で推理小説などを読むようになった。大学から小説を書きはじめ、卒業後も働きながら創作を続けた。新人賞に投稿を続けるも、思うように結果が出ない中で、挑戦したのが新潮ミステリー大賞だった。
昨夏、受賞の一報は買い物中のスーパーで受けた。「通らないだろう」と予想していたそうで、とにかく驚いたという。先月22日には本が発売されたが、「自分の本が(書店に)置かれているのが信じられなくて」と照れ笑い。故郷の友人から「本屋でランキング3位に入っているよ」とメールが届き、少し実感したそうだ。
座間に移り住んだのは昨年の秋。時折近所を散策するようで、今はお気に入りの本屋を探しているそう。
映像化については、東映が検討中。小説新潮2月号では短編を発表し、次回作も既に動きだしている。彩藤さんは「読者が『面白い』と思える作品を書き続けていきたい」と更なる創作に意欲を見せている。「サナキの森」は新潮社より1400円(税別)で発売中。
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