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厚木・愛川・清川 コラム中小事業主・起業をめざす人へ

公開日:2016.06.10

中小事業主・起業をめざす人へ
第10話
事業継承 敷地にまつわる一つの課題
あつぎみらい21  中小企業診断士 大塚 惣助

●会社の敷地は誰のもの?



 製造業の経営の場合、当然ながら工場には(ファブレスは別にして)敷地があります。さて、この敷地は誰のものでしょうか。経営者の多くは、日々の経営で特には意識して考えてはいないようです。それはそうですね。経営の基になるような事柄は、毎日、毎日考えるものではないでしょう。しかし、社長に何かがあって、事業承継の問題が発生した時には厄介なことになる場合があります。ケースによって考えてみましょう。



●社長ひとりの所有となっている場合



 法定相続人が複数いて、相続について何も手当てしていないとすると(このケースが多いのです)分割して相続することになります。先ずは、相続人全員による分割協議を行い、誰かの所有とする。そうならない時は分割相続。相続人全員が経営に協力的であれば、取り敢えず相続人から会社が賃貸借して工場の敷地とすることはできましょう。しかし非協力な人がいて、いずれは他人に譲渡したいとする時はどうしますか。実際、このケースがあるのです。



●社長と他の人との共有となっている場合



 例えば、社長と叔父さんとが共同出資で創業し、敷地も共有としている場合、社長の持ち分は相続、叔父さんの分はそのまま、となりさらに複雑な関係となります。このようなケースも実際にあるのです。



●他人の土地を社長個人が賃貸借している場合



 賃貸借契約の承継となります。だれが承継人となるか、これも協議の対象となりましょう。問題は、これを機会に地主から契約変更を求められる、つまり地代の値上げがある、ということです。このケースも実際にありました。



●敷地が会社の所有となっている場合



 これは経営が安定し最も好ましいのです。この場合の課題は株式の評価額です。敷地も会社の経営資産として評価されるので、経営が好調な場合株式の評価額が多額となります。社長の持ち分は50%を超えているでしょうから相続財産はその分多くなります。



――では、どうしますか



 以上述べたことは、社長に何かがあって急に承継問題が発生した場合、会社の敷地はどうなるか、ということです。ですから、そうならないように、今のうちから方策を講じて置くことです。敷地は会社の所有とする、後継候補者を決める、後継候補者に社長の株式持ち分を計画的に贈与する、等のことは行いましょう。敷地の所有には資金も必要となりますので、計画的に進めることになりましょう。



 会社の敷地の所有についてはいろいろなケースがあります。ということは、とりもなおさず、例えば社歴30〜40年前後の企業にあっては、創業時の苦労の歴史がしのばれる、ということではないでしょうか。苦労を”いしずえ”として、これからも経営の足腰を強くして行きましょう。



 筆者/大塚 惣助(中小企業診断士)※あつぎみらい21コラム「経営講座」より☆このコーナーは中小企業診断士を中心に、県央地域の振興のために活動している団体「NPOあつぎみらい21」の協力による連載です。

 

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