市内大山在住の笛演奏家、福原洋子(本名・尾崎洋子)さん(79)が、このほど国指定重要無形文化財「長唄」の保持団体「伝統長唄保存会」会員として総合認定された。国の無形文化財保持者の誕生は市内初。
福原さんは7月に文化審議会による文部科学大臣への答申で、同保存会の会員として総合認定されることが内定。このほど正式に認定された。
市内初の快挙に「続けてきて良かった。周りに支えられてここまできた。感謝です」と声を弾ませ、「若い女性奏者の希望になれたのでは。そういう意味で少しはお役に立てたのではと思います」と話す。
福原さんは静岡県出身。中学2年の時、両親から「何かたしなみを」と笛の稽古を勧められたことがきっかけで笛の世界に。東京芸術大学邦楽科に進学し、長唄囃子の1期生として笛を学んだ。
「知らず知らずに引き込まれた。はじめは全く興味がなかったのに」と話す。大学を卒業後NHK邦楽技能者育成会でさらに1年間笛を学び笛奏者として独立し、大学時に講師を務めていた人間国宝の福原百之助(4代目寶山左衛門)に師事。「福原会」一門として同保存会などにも所属し、今も数多くの演奏会に出演している。「当時はまだ男性中心の社会で女性がほとんどいなかった。大変だったけれど、とても勉強になった」と振り返る。
25歳で結婚を機に伊勢原へ。子育て中は一切笛とのかかわりを断っていたという。「家事や子育ての合間にできるものではないのは分かっていたので、笛はあきらめるつもりだった」。
その後40代になり子育てが一段落した頃、関係者から復帰への声がかかり、再び笛の世界へ。60歳から始めた伊豆の寺院の本堂でのボランティア演奏は、ライフワークの一つになっている。
現在東京や新潟に合わせて20人ほど弟子がいる福原さん。弟子と山にでかけ自然の中で演奏するのが癒しになっているという。「桜などをバックに、自然のエコーで演奏すると気持ちいい。通りがかりの人がお客さんです」と楽しそうに話す。
笛の魅力を「単純にして複雑な楽器。たった7つの指穴で喜怒哀楽のさまざまな音色を奏でることができて楽しい」と話し、「今後は、市の催しなどで多くの人に笛の魅力を伝える体験教室なども機会があれば開きたい。少しでも役に立てれば」と話した。
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