伊勢原 社会
公開日:2025.10.16
百年の歴史刻む伊勢原の柿
昭和天皇即位を記念して植樹
伊勢原市田中にある成田賢徳さん(88)の柿畑。ここに立つ柿の木は、およそ樹齢100年。幾多の困難を乗り越えながら今なお実りを届けている。
この柿は、1927(昭和2)年、昭和天皇の即位を記念する事業の一環として、当時の農会の技術員であった多田梁助さんの指導のもと、新しい農業の形として伊勢原に導入されたものだ。
賢徳さんの祖父・成田賢治さんを含む5人ほどが、柿の苗木を植樹。成田家では、100本の苗木が植えられたと伝わる。しかし、太平洋戦争のさなか、柿は「贅沢品」と見なされ、木は腰の高さで切り落とされる運命にあった。代わりに小麦やサツマイモなどが植えられたという。
終戦を迎え、切り株から新たな芽が吹き出す。それを大切に育てた結果、昭和30年代前半頃には、甘くて美味しい伊勢原の柿として、東京の神田市場に出荷されるまでに。当時、食べるものが少ない時代に、甘くて腹持ちの良い柿は大変な人気を博した。当時中学生だった賢徳さんは「買い付けや連絡のためにオートバイで担当者が訪れ、村中の子どもたちが珍しがって集まった」という記憶が残る。
現在、成田家の畑には当時の柿の木が50〜60本ほど残る。品種は、今も人気の「富有」と「次郎」。土の栄養分が高く、甘みが強いのが特徴だ。近隣には多田梁助さんの孫・美枝子さん(75)も住んでおり、「祖父が面倒を見た柿だ」という誇りを胸に、今もその手入れを見守り続ける。
百年にわたり継承されてきた柿は、農家の努力が生み出した「勲章もの」の産物。11月の収穫を目前に控え、「今年も美味しく実っている。早く皆さんに届けたい」とふたりは微笑んだ。
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