昨今、ブラック企業の問題とともに大きな関心を集めている「働き方改革」。様々な企業が頭を抱えるこの課題に、いち早く取り組んできた市内企業「吉原精工」の吉原博会長を講師に招いた講演会が、11月22日に行われる。「社員7人の町工場が実現した”残業ゼロ”の働き方改革」と題し、自身の体験談を講演する。
吉原会長(当時社長)が働き方改革に取り組み始めたのは、バブル(1990年)の時。少しずつ社内環境整備を行い、バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマンショックと3度の経営危機を乗り越えながら、「残業ゼロで年収600万超え」の経営手法を確立した。
同社は機械1台、ひと1人の間借り創業から始まったワイヤーカット加工専門のものづくり企業。一時は社員20人、工場3棟まで拡大したが、残業・休出が当たり前のブラック状態が恒常化していたという。
しかし、売り手(就職側)優位だったバブル時代。条件の悪い会社には若手が集まららず、吉原会長はセミナー受講などの経営勉強会を開始した。現在の社員グループ分け(通常勤務2グループ、夜間勤務1グループ)のひな形が構築されたのはこの時。これを軸に午後10時と午後7時までの残業、定時上がりを各2日ずつ設け、「ノー残業デー」にあたるシステムを作った。
他にも残業代を組み込んだ給与の固定制(年俸制)や、当時では珍しい土日週休2日制の導入、年3回の10連休などを先進的に実施。倒産危機を迎える度にムダを見直し、段階的に残業を減らしていった。
最大の契機は、2009年のリーマンショック。「金がないなら時間をくれ」という社員の声を受け、残業をゼロまで短縮した。
メディアが注目
「世間からは『社員に甘い』と言われるが、そんなことはない」と吉原会長は語気を強める。あくまで企業として利益を追求する上で構築したシステムであり、この上に社員とクライアントも含めた「三方良し」が成り立っているからだ。
これを実現するため、会長自ら現場で社員に注意を促し、ムダな動きをなくすための意識改革を行った。「出来る社員のノウハウ共有化」も行い、業務の効率化を徹底。昼休みや退社前までに人の手で行う作業を終わらせ、機械を常に動かせる状況を作り出した。
また、シフトも土日休みと日月休みに分けることで週6日の工場稼働を可能にし、10連休も前後をずらし完全休止期間を短縮。社員がしっかり休みながらもクライアントに迷惑がかからないよう配慮した。連休に有給を充てることで、高い有給消化率も実現している。
こうした取り組みが厚労省のパンフレットに掲載されたのを機に、日刊工業新聞が取材。ヤフーニュースやSNSで拡散され、NHK、日経新聞、日経トップリーダーなどにも取り上げられ、注目を浴びた。
11月22日 講演会
講演会は市の男女共同参画事業として、市役所3階315会議室で開催される。午後6時半から8時半。定員先着60人で、誰でも無料で聴講できる。
当日は「残業ゼロで年収600万超え。そこに至ったユニーク経営とは」をテーマに、自社の競争力強化や社員のワーク・ライフバランス向上などを吉原会長が自身の体験を交え講演。「人材の定着や生産性の向上、低価格化、業績向上に悩む経営者は必聴の内容です」と担当する市企画課では話している。
申込みは同課【電話】0467・70・5657へ。
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