流通過程を間近に市場の入札も体験
海洋科学高校の蛭田壮(たけし)さんが実習に訪れる三浦市三崎のまぐろ問屋「西松」は、1894年創業の老舗企業。買い付けや水揚げ、冷凍まぐろの加工・販売、マーケティングのほか、高校実習船のサポートといった市場育成も手掛けている。
この日は朝から同社の主力商品のひとつである、「無添加ねぎとろ」の製造ラインを担当。白衣、エプロン、マスク、帽子、手袋などを手際よく身に着けて、工場へ向かうと先輩社員に混ざって黙々と作業を始めた。
目の前には、刺身でも食べられる上質なめばちまぐろの赤身がずらり。安心安全な食品を扱う責任を感じるとともに、色や部位を一つずつ確かめながら、筋や骨などを包丁で丁寧に切り分けていく。4月から実習がスタートして約3カ月。仕事の飲み込みの速さに、指導役も舌を巻く。
「進路に考えている食品製造業を幅広く学びたかった」。同社での実習に手を挙げた理由を話す蛭田さんは、「どれも学校では学べない貴重な体験ばかり。とても新鮮で、やりがいを感じている」と、ここまでの充実した学習の様子を振り返る。まぐろを保管する同社の冷凍庫や、関係者以外の立ち入りが制限されている今春開設されたばかりの新市場で入札の様子も間近で見学。原材料の調達から加工といった、食品製造の一端を知ることができたのは、大きな収穫だという。「今後は、さらに流通過程を学び、どのように三崎のまぐろが全国の消費者へ届くのかもっと知りたい」と目を輝かせた。
手掛けた「商品」食卓へ直売や加工に意欲
炎天下の夏空、黙々と茄子の枝が倒れないように”誘引”という作業をしていた、齊藤輝(あきら)さん。この日の午前中は、ねぎの定植を手伝っていたという。4月半ばから毎週木曜の実習日に、林にある鈴木優也さんの畑に赴いており、「多品種を手掛けていて勉強になる」と汗をぬぐった。前週は加工場を見学し、収穫した野菜がその場で商品となっていく過程にも触れた。農業従事者が食品加工・流通販売にも業務展開する「6次産業」の現場。「野菜を作ったすぐ先に、こんな世界があるとは」と驚いた。
祖母が市内の武でキャベツとかぼちゃの畑を持っており、幼いころから農業は身近な存在。両親は家業を継がなかったが、農業高校への進学は自然な流れだった。担当教諭からは「知識はもちろん意欲があり、勉強熱心。期待している」と今回、横須賀商工会議所が進める「産農人プロジェクト」に送り出された。
「おいしい野菜ができると嬉しい。それが農業の楽しさ」と笑顔が光る。実習では、鈴木さんから「消費者目線で農業を考えよう」との教えを受けた。「定番野菜を市場に出すことも農家として意義ある仕事だが、ニーズに合ったものを提供したい」との想いが芽生えた。実家の畑の作物をすかなごっそで販売するための手続きをしている最中、祖母が急逝。後継ぎとしての責任感がさらに強まった。「今年の秋冬に、(すかなごっそで)自分の野菜を販売できれば」。高校生ファーマーがその先に見据えるのは商品加工。未来の”産農人”の自覚は十分だ。
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