でこぼこ道の子育て記 12.自宅でのリハビリがスタート一般社団法人sukasuka-ippo代表理事 五本木愛
―現在の連載は10年ほど前、子どもたちがまだ小さい頃、介護をしていたときの経験を書いたものです―
義父と同居する家を建て替える間、共に借家に引っ越してきた私たち。その頃の様子はというと、時々物忘れがあるな…という程度。身の回りのことは自分でこなし、行きつけの飲み屋さんにひとりで出かけたりもしていました。
そんな中、通院では自分の名前や生年月日など簡単な質問をされるのですが、いざ先生から質問されると答えられなくなり、助けを求めるように私を見る義父。それに気付いた先生が「お嫁さんは向こうを向いていて」と一言。実は、診察の直前に「今日は○月○日だよ」「先生の名前は○○だよ」と教えてしまっていたのでした。でもこれでは病気の進行が分からなくなってしまうので、怒られるのも当然。こういう所が、私がまだアルツハイマーへの理解が足りない部分でした。
進行を遅らせるための日課は日記。といっても、朝食後に、前日の昼食と夕食、そしてついさっき食べた朝食の内容を書くという簡単なもの(嫁としては日々の食事内容が知られるわけですから、朝昼晩と、それはそれは献立に気を遣いました)。それに加え、漢字と算数のドリルもあったので、毎日私が朝の家事を済ませたあとに義父に付き添い、ひとつひとつ一緒にやらなければなりませんでした。1時間以上かかることも多く、見守るにも根気がいる作業でしたが、この「思い出す」ことこそが病気の進行を遅らせる重要なリハビリなのだと信じ、義父自身も「自助努力だからな」と言って頑張っていました。-次回に続く