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【Web限定記事】コロナの今、その先─ <経済> 横須賀の経済構造を抜本的に変える時 平松廣司氏(横須賀商工会議所会頭)

掲載号:2020年5月29日号

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中小企業の経営をサポートする「横須賀商工会議所」第12代会頭。「かながわ信用金庫」の理事長でもある。明治、大正時代の実業家で「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一の研究家としても知られる
中小企業の経営をサポートする「横須賀商工会議所」第12代会頭。「かながわ信用金庫」の理事長でもある。明治、大正時代の実業家で「日本資本主義の父」と呼ばれた渋沢栄一の研究家としても知られる

 新型コロナウイルス感染拡大・外出自粛の影響は多分野に渡っています。「今」の動きと「これから」を横須賀商工会議所の平松廣司会頭に聞きました。

 

──コロナ禍を受けた市内の経済状況について、業種によって影響の濃淡はあるかと思われますが、どうでしょうか。

 「飲食、観光、一般小売業と幅広い事業者が家賃問題、売上大幅減少等に直面している。経営的には、手持ち資金でしのいでいる状態。セーフティネット保証4号・5号の認定貸出を受けるための手続きを取っているところと思われる。相当つらい状況にあるはずだ。神奈川県の緊急事態宣言が解除されたが、急激なV字回復は望めないだろう。当面はソーシャルディスタンスと『3密』を配慮する市民生活が続き、これが経済活動を縮小させてしまう。業種によって回復度合いに大きな差が生じると予想している。政府が打ち出した種々の補助金、給付金の支給の遅さが取り沙汰されているが、一番必要なときに入手できないというリスクが、さらに経済回復を遅らせてしまう。これには早期の対応を求めたい。コロナの感染拡大が完全になくなるまでに1〜2年要すると言われているのと同様、横須賀の経済回復も時間が掛かるだろう。当面は”コロナ後”の日常生活の変化をにらみながら経済活動を再開させていくことになる」

──横須賀商工会議所と横須賀市は「観光立市」を経済戦略の重要な柱に位置付け、様々な取り組みを進めてきました。一定の成果が出ていたところで今回の事態。特に外食・観光は大きなダメージを受けています。

 「日々現金による収入が経営の中心であった飲食店は、休業要請に応じることで収入が途絶えてしまった。その一方で、家賃や従業員給与など固定費の支払いは発生する。商議所は、こうした事業者が廃業に追い込まれないよう対策を講じることが必要である。取り組みの1つとして、5月に官民一体となって、飲食店などの資金繰りを支える応援サイトを立ち上げた。支援者が応援したい店舗を選んで電子チケットを購入し、売り上げ金を店舗に前払いすることで当座の事業資金を確保してもらう。6月中旬には、チケットに30%のプレミアムを付与する仕組みにリニューアルしていく。店舗と応援者の双方にメリットがある形となる」

──観光事業者も苦しい状況に置かれています。

 「コロナ禍がひと息ついたとしても、『3密』の回避を継続した日常となるため、観光業への影響も避けられないだろう。ただ、特別な収入資源を持たない横須賀はこの先、マリンレジャーや海洋クルーズなど、海を主とした観光業で生きていかなければならない。しかし、現時点では『日帰り』『通過観光』が主流であり、連泊はおろか1泊して物見遊山するほどの名所旧跡が存在しない。従前より言ってきたが、このことが消費に結びつかない、地元産業へと成長できない弱点である。入込客数は増えてきたが特別な歓迎、おもてなしセレモニーもない。そして高額な横須賀ならではの土産品がない。海軍カレーは知名度を高めたが、せっかく大勢の観光客がバスで訪れても市内で100人以上が一堂に食事できる場所がない。結果、市内にお金が落ちない。事業所が増えない。最終的には市内の雇用問題となり、景気の好循環をつくれていない。これが横須賀の実情だ。コロナ禍による社会の変化を契機に、観光事業を市内全体が潤うよう市民、事業者、行政による『オール横須賀』の体制で、持続的かつ発展可能な仕組みに再構築しなければならないと思っている」

──商議所が横須賀市に要望した家賃補助などの経済対策が採用されました。第2次要望のプレミアム商品券等も動き出しています。これらの必要性を聞かせてください。

 「当面は感染拡大を防ぐこと、そして現状困窮している事業者に対する補助給付をスピーディーかつ手厚く実施していくことが肝要だ。商議所の会頭として上地克明市長に2度にわたって補助金要請を行った。先日、早期実施を改めてお願いし、追加の経済対策として中小企業の家賃支援が発表された。域内の消費について、再開した経済活動を軌道に乗せるための景気刺激策としてプレミアム商品券の発行が有効と考える。ただ、販売手法は従来型ではなく、購入手法と利用先の工夫が必要である。例えば、企業の一括購入を促して従業員に厚生資金として配布することや、使える範囲を特定地域の商店街に限定するなど、(プレミアム券の)販売促進と消費促進を同時に実現する戦略が必要だと思っている。それぞれの商店街が魅力ある商品を用意し、セレモニーの実施などで独自色を打ち出し、来店客を増やす工夫も大事。そのために、商議所も商店街や個々の事業者の相談に乗りながら共同作業ができればと考えている」

──今後の雇用状況はどうなっていくでしょうか。

 「新型コロナウイルスの感染拡大は、医療、経済に大きな被害をもたらしたのと同時に雇用の不安定化を引き起こした。特に市内の飲食業、サービス業、運輸業等で一部深刻な事態が発生している。緊急事態宣言が解除されたことで、一定の回復は見込まれるが、生活様式が感染防止対策を中心としたものになるため各企業、事業体でこの先、雇用の維持が難しくなるのではないかと危惧している。各事業所では、再就職を約束して自宅待機または一時解雇の方法を取っているケースがあるようだが、可能であれば完全解雇ではなく、時間限定の勤務制度の利用を勧めたい。従業員の収入は減少するが、失業や無収入を避けられる。経営に大きな影響を受け、継続雇用が不可能であっても短時間勤務等のやりくりを徹底することで、経済が回復した際の人員確保につなげて欲しいと願っている。そのためにも、政府や自治体による事業所と失業者に対する支援金の早期支給を急ぐべきである」

──中小企業に対して国・県・市の支援制度や補助金メニューが数多く出ています。商議所には日々、多くの相談が寄せられていると思われますが、事業者からどういった声があるでしょうか。一方で、中小企業経営者は、書類申請等の手続きを苦手としている人が少なくありません。商議所ではどんなサポートを行っていますか。

 「4月は確定申告の延長対応と融資や休業要請に対する相談が殺到。5月は補助金や給付金手続きに対する相談が増えた。資金繰りがひっ迫している企業が多く、スピードを最優先して商議所の全職員で対応し、関係機関との調整に奔走した。特に雇用調整助成金に対する相談が多数あり、社会保険労務士と提携し独自で相談会を開催したところ、4月・5月で約170社の申し込みがあった。この状況を受け、6月以降も継続している。5月からは国の持続化給付金の支給申請も始まり、当所に県下初となる申請サポート会場が開設された。これらの申し込みはWeb受付のみであり、ITに不慣れな小規模事業者から対応できないという相談が多数寄せられたため、当所は独自ですべてサポートする体制をいち早く整えた。その後、全国的に要望があり、国の申請サポートも電話による申し込みが可能となった。現在は国と互いに連携し交通整理をしながら、混乱なく対応している。今回のコロナ禍でテレワークやテレビ会議、ネット販売、キャッシュレス化、電子申請など、経営環境が一変した。ITを経営面で活用することが不可欠となっており、今後はますますこの傾向が加速していく。従来にも増して小規模事業者へのIT支援を強化していかなければならないと実感している」

──コロナ禍の地域経済への影響と今後の見通しを聞かせてください。

 「神奈川県も緊急事態宣言が解除されたが、感染防止対策を取りながら経済活動も活発化させなければならない。治療薬がいまだ開発されず、ワクチンも一般市民に普及するには相当な時間を要することが予想される。現状では人と人との接触を限りなく減らし、『3密』状態は絶対に避けることが一番の感染防止策であり、自己防衛策。現時点ではこれに徹する以外ない。問題はこの状態が続くということだ。人が集まると感染リスクが高まるのではないか、といった疑念を持ちながらの生活が続く。これにより日本経済も横須賀経済も先を見通せない『縮小型』を続けることになるだろう。当面は世界から日本を訪れるインバウンドは期待できない。日本経済GDPも今年はマイナス3・0〜4・0%が見込まれており、厳しい環境の中で1年を過ごすことになる。横須賀経済はどうか─。私は新型コロナウイルス不況を機に、横須賀の経済構造、産業構造を抜本的に変えるべき時が来たと思っている。端的に言えば、横須賀ならではの唯一無二の基幹産業を創り出すことだ。かつては造船、自動車等の重厚長大型に類する産業が基幹として存在し、地域に安定した雇用をもたらしたが、今やその面影はごく一部しかない。一例として今回のコロナ禍で、何故マスクが不足したのか。日本は昔からマスクを身に着ける習慣があり、当然国内企業が災害時でも全国民が使用できる程度の生産はしているだろう、あるいは備蓄をしているだろうと思っていた。ところが、他国に全面依存していたことに一種の驚きを覚えた。身近な生活用品まで他国に依存していたのかと。これでは中小企業が減少するはずだと改めて感じ入った。グローバル時代に保護主義を決して良しとしないが、非常時に国民が使用する災害用品、公衆衛生用品、災害時必需品くらいは国内で自給自足できる程度は日頃から準備しておくべきだ。そこで1つの提案だが、横須賀は今こそ、東京や横浜に近い利点を活かし、そうした需要が発生したら即刻生産体制に入り、全国に供給できる中小企業、事業所を持ち、それを市や会議所が認定し、備蓄を含めていつでも生産体制が取れる『非常時用品生産拠点都市』を目指してはどうか。将来の人口増、雇用促進にもつながるはずだ。観光業とともに、このような製造業を基幹産業として産み育てていく戦略が必要である。変化していく社会情勢の中で横須賀の立ち位置について、もう一度考えてみることも大切ではないか。そして、考えるだけでなく、市と商議所と市民が共に行動に移していくことが重要課題だと痛感している」
 

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