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【Web限定記事】コロナの今、その先─ <教育> 「オンライン」必要性と現実的課題のジレンマ 米持正伸氏(横須賀市教育委員会事務局 学校教育部部長)

掲載号:2020年6月5日号

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横浜国立大学附属鎌倉中学校の副校長を経て現職。学校教育部では、授業や行事などに関するカリキュラム全般の編成を担当している
横浜国立大学附属鎌倉中学校の副校長を経て現職。学校教育部では、授業や行事などに関するカリキュラム全般の編成を担当している

 新型コロナウイルス感染拡大・外出自粛の影響は多分野に渡っています。「今」の動きと「これから」を各界の関係者に聞きました。

 

──新型コロナウイルスをめぐり、休校・再開の判断で保護者への伝達事項が二転三転しました。あらためて教育行政における国・県・市の役割分担、イニシアチブの所在について聞かせてください。

 

 「2月末に安倍総理が『一斉休校』を要請し、緊迫した事態の中で対応を迫られた。国─県─市の順で通達があったのだが、あくまでも『要請』であり、市独自の判断が求められていた。当初は4月1日から新学期をスタートできるよう市教育委員会から各校に通達したが、直後に政府による『全国すべての休校要請』に始まり、4月7日の特措法に基づく『緊急事態宣言』、それを受けて県知事からの『休校要請』へと事態が変化していった。こうした背景があり、保護者への伝達事項をすぐに上書きしなければならないような場面が生じた。地方分権は教育の分野でも積極的に進められ、カリキュラムの編成等で独自性が保証されているが、市教育委員会として、何よりも児童生徒の健康と安全を最優先に考え、臨時休校の措置を取った」

 

──休校対応に関して、保護者からの要望や相談にはどのようなものがあったでしょうか。

 

 「休校当初はちょうど卒業式の時期。市教育委員会では感染拡大防止の観点から、卒業式は卒業生と教職員のみとする規模を縮小した形で実施することにしたが、保護者の出席を求める声が多数寄せられた。その後は学校再開に関して、子どもを学校に通わせること自体が不安である、との意見が増していった。緊急事態宣言や新型コロナウイルス感染が全国的に拡大する中で、学校対応について保護者の捉え方は大きく変化していった」

 

──休校中の家庭学習について市の考え方を聞かせてください。

 

 「まず前提として、本市では、今回の休校以前から、子どもたちが自発的に家庭学習に取り組み、計画的な学習習慣を身にけることができるよう授業を工夫し、効果的な課題を提供してきた。学力の向上や知識の定着には、学校での授業とそれを補完する家庭学習をセットで繰り返し行うことが欠かせない。一方で、今回の休校措置は、当初の想定を超える長さとなり、学校の授業がない中で課題に取り組まざるを得ない事態となった。3月は教師も急な対応を迫られたことで、十分な課題を用意できなかったのは事実。復習中心の学習を指示するにとどまった。4月は当初、登校日を設定しており、課題を児童生徒に手渡しして、コミュニケーションを図りながら進める段取りだったが、感染防止行動の徹底が強まり、臨時の登校日も中止した。5月も緊急事態宣言が延長となったことで、新学年の学習内容を予習していくことも必要と考え、教育委員会が全教科で課題の事例集を作成した。各校がこれを参考に1週間単位で課題を提供し、保護者の協力も得ながら学びの空白を埋めるようにした。加えて、教育委員会のホームページに『家庭学習応援コーナー』を設け、学校からの課題と合わせてオンライン教材の活用を勧めた」

 

──学校やクラス、担任の教師によって、課題の内容やボリュームが異なっており、不安や心配を抱く保護者もいたようです。また3学期末の授業の積み残しについて、どのようなフォローアップを考えていますでしょうか。

 

 「課題の内容やボリュームは、各担任が3月以前までの学習実態に合わせて、調整しているため、差異が生じていることを承知している。これについて、特に小学校は学級担任制であるため、学習到達度がクラスでまちまちなのは当たり前。一様でない。状況は担任(担当)教師が一番把握しており、児童生徒の実情に合わせて適切な課題を出しているので、学校からの指示にもとづいて実施してもらえれば心配ない。3学期末の積み残しのフォローアップは、授業が再開した後に、新しい内容と関連付けて学習していくようになる。学習面全般で不安なことがあれば、遠慮なく、学級担任に申し出て欲しい」

 

──授業の代替手段として、オンライン学習が全国的に注目を集めました。これを求める声も高まっています。県内の自治体では、横浜市、相模原市が独自制作の学習動画、小田原市では教育チャンネル開設などの事例が出始めていますが、横須賀市はこの分野で出遅れている印象があります。現状の取り組みや方向性について聞かせてください。

 

 「教育委員会のホームページに設けた『家庭学習応援コーナー』は、既成の教材だが、学年別、教科別に接続できる仕組みとなっている。教科書にも準拠した内容で、学校から提供される課題と組み合わせることで、学習効果が期待できるものばかりだ。数多くあるコンテンツの中から本市教育委員会の指導主事が厳選した。利用者から好評をいただいている。本市の図書館、博物館、美術館からも学習に役立つコンテンツを紹介してもらい、教育委員会を挙げて家庭学習のサポートに取り組んできた。一方で、教育現場のデジタルツール活用は、コロナ禍を受けて、新しい局面を迎えていることも認識している。授業だけでなく、児童生徒の状況確認にもオンラインは有用。研究を進めたい。この分野に関心を寄せる現場教師もいる。有志でオンラインを想定した模擬授業を行っているとの報告も受けており、教育委員会として、こうした前向きな取り組みを後押ししていく考えだ。注意したいのは、授業の主役は配信する側の教師ではなく、児童生徒であること。授業のライブ感をどうつくり上げていくのかが課題だ。集中力を維持する工夫も必要となるだろう。もうひとつの懸念は、家庭によってネットワーク環境に差があること。4月下旬に横須賀市PTA協議会に協力してもらい、ネット環境のアンケート調査を実施したところ、児童の約2割が『日中にパソコンなどの機器を占有して使える環境にない』ことが分かった。公教育の担い手である教育委員会として、家庭環境による取りこぼしを生じさせてはならない。『なぜ、(オンライン学習を)すぐに導入しないのか』といった批判の声もあるが、公平性と平等性は重要な視点である。市内には公立校が69校あり、高速回線を全てに導入するには時間を要するなど、ハード面の整備の課題もあることをご理解いただきたい」

 

── 休校明けの学校現場での感染予防対策について聞かせてください。

 

 「学校再開前に、学校内の消毒と清掃を徹底して行った。6月から新しい学校生活がスタートしたが、各家庭には引き続き毎朝の検温、栄養補給や十分な睡眠をとること、体調不良の際は出席を見合わせる等の協力をお願いしている。当面は、分散登校や短縮授業などで、いわゆる『3密』を防ぐ対策を取っていく。教育活動を通じ、こまめな換気、マスクの着用、手洗い・手指消毒なども徹底していく」

 

──夏季休業の短縮方針が発表されました。授業の遅れを取り戻すために、児童・生徒に過度な負担を強いることを心配する向きもあります。このほかに行事の扱いについて、市の方針を聞かせてください。

 

 「学習の遅れを取り戻し、授業時数を確保するためには、夏季休業の短縮をはじめ、運動会や修学旅行などの行事も規模縮小や中止を検討せざるを得ない状況。授業再開には、十分な慣らし期間を設け、過度な詰め込みは避けるようにし、生徒の負担を軽減させる考え。全人的な人格形成が教育目標であり、各種の行事は不可欠なもの。部活動も同様だ。特に最終学年にはできる限りの機会を用意したいと思っている」
 

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