四代目・高橋利治さんの曾祖父が1887(明治20)年に創業した老舗旅館「一國屋」(汐入町)が今月14日(日)、134年の歴史に幕を下ろす。
創業当時、日本の近代化に重要な役割を果たした横須賀製鉄所(造船所)が目の前で稼働しており、その様子を一目見ようと全国から訪れた観光客や海軍兵士、自衛隊関係者の滞在先として機能した。一國屋のほか、近隣には多くの旅館が軒を連ねたが、1889(明治22)年、街の半分以上が大火事に見舞われることに。やむなく廃業した旅館もあったが、一國屋は全焼まで至らず、修繕だけで事なきを得た。また同年、JR横須賀駅が開業。徒歩1分に位置する一國屋は「横須賀の玄関口」として戦後さらに客足を伸ばした。
1997年に6階建て、28部屋に増築し、今の形になった。大学卒業後、横浜市のホテルで経営のノウハウを学んでいた高橋さんもこのリニューアルを機に一國屋へと戻り、父親が亡くなった2007年から受け継いだ。近年では屋上から海を望める絶景をSNSで発信すると、艦マニアなどから反響を呼び、時代とともに旅館としての魅力も移り変わっていった。
閉館の理由は、コロナ禍による集客減。売り上げも例年の3割程に低迷し、高橋さんは今月1日、閉館を決断。「存続して」「思い出の場を失うのは嫌だ」といったファンの声も多く寄せられた。高橋さんは「お客様の言葉が心に染みて、店を畳むのは断腸の思い。小さくてもいい。いつかまた『一國屋』の名を復活させたい」と前を向く。跡地の扱いはまだ未定という。
![]() 旅館にある最も古い外観写真=昭和12(1937)年頃
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