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「フェリー問題」行政対応その先は タウンレポート

社会

掲載号:2021年7月23日号

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停泊中の「はまゆう」。SNSなどでは新航路への注目も高まっている
停泊中の「はまゆう」。SNSなどでは新航路への注目も高まっている

 今月1日、荒天の中で見送りの紙テープとともに新門司港に向けて出航した東京九州フェリー。コロナ禍もあり大々的なセレモニーはなく、夜間の静かな船出となった。

*  *  *

 横須賀市が北九州(新門司港)間の新航路の開設を発表したのが2018年12月。この時点で2021年春の就航、夜発着・週6便のデイリー運航という形態も示されていた。上地市長は当時の会見で「第2の開国」と期待を表した。かつて久里浜港と大分港を結ぶフェリーが約3年半という短さで廃止となったこともあり、「新たな定期航路は市の悲願」と語っていた。

 本来ならば、この就航はもっと前向きな話題であったはずだ。しかし「フェリー問題」として注目されてしまったのはなぜか。

単なる意見の相違か

 就航計画当初の発表では「新港」の1・2号岸壁を使用すること、ふ頭で自動車輸出などを手掛ける既存事業者の業務とフェリーの寄港時間を昼夜で振り分けることなどが明らかになっていた。その時点ですでに市は「(フェリーと既存事業者との)利用の調整が必要」という認識を持っていた。

 しかし、19年半ばに市が港湾事業者に行った説明では図面や資料もない状況が続いたという。完成自動車輸出のための荷捌き場確保や数日かかる鮪の水揚げ作業など、用途変更やフェリー寄港による影響は大きく「フェリーと共にふ頭を使うことは物理的に難しい」として事業者らで構成する港運協会は、その年の後半から市に協議を申し入れ、対応を求めていた。市は「共存は可能」という姿勢で、真反対の見方。「禍根を残すような調整にならないよう配慮したい」と市議会では前向きな回答をしていたが、そこから1年以上、実のある議論ができていなかったのは事実だ。

 今年6月になり、国土交通省が仲立ちする形で協議が行われ、今月9日、いくつかの条件で市と事業者が「合意」した。市による港湾施設の改良や運用の変更、第2突堤の整備などが盛り込まれており「共存は難しい」という事実に対応した形だ。こうした具体策を持って事前に議論ができていれば、国が間に入るような事態にならず、就航後もこの「問題」を引きずることはなかったのではないか。市長は会見で「ボタンの掛け違い」と発言したが、状況は単なる「意見の相違」ではなかった。就航計画を策定する時点で全体を俯瞰して意見を求め、交渉のテーブルを開いていくべきだったであろう。

市民不在の計画

 港運事業者との議論から、もうひとつ問題が浮上した。「ふ頭利用を巡る報道で、フェリー就航を初めて知った」。近隣のマンションには、昨年半ばまでフェリーの概要が伝わっていなかった。住民が懸念したのは、住環境への影響だ。市の担当部局は「具体的な計画が提示できず、説明会が開けなかった」と釈明。副市長が議会の席で説明不足を謝罪する場面もあった。それでも就航日は変わらず、住民が「安心安全が脅かされている」「市民をないがしろにしている」と感じたのも無理はない。横須賀のようにフェリーターミナルがここまで市街地と近接している例はなく、それだけに丁寧な計画説明が必要だったはずだ。

 住民からの陳情を受けて市は今年2月、交通量や環境の調査を行った。実際には今月1日の就航以降、フェリーのエンジン騒音や排ガス臭、トラックの動線よる渋滞や待機車両のアイドリング、フェリー照明の光害などの苦情が出ており、住民らは市に対応を求めているところだという。

*  *  *

 首都圏と九州圏を結ぶ海運には、さまざまな期待もある。港運事業者もポートセールスの重要性は認識しており、当初からフェリーの就航自体は歓迎の立場。個人旅行客の需要掘り起こしなど、観光で経済を立て直したい市にとっては、願ってもないチャンスだろう。

 航路の開設はゴールではなく、スタート。市民・住民、既存事業者などが抱える課題や問題について、後回しにせず速やかに対応する姿勢を見せることが、市の信頼回復につながるはずだ。

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