横須賀・三浦 コラム社会
公開日:2022.03.11
よこすかでジェンダーを考える
家庭内の「分業意識」その先に
#3 井田瑞江さん
世界経済フォーラムが毎年3月に発表している、男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」で日本の順位は156カ国中120位。別の国際的なデータでは、無償労働時間(家事・子育てなど)の男女比は、男性を1とすると女性は5・5倍。家庭内の性別格差がそんな数字に表れています。連載の3回目は、社会の中での最小単位のコミュニティ「家庭」でのジェンダーについて。市の審議会委員で関東学院大学准教授の井田瑞江さんです。
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家族社会学という分野を専門としています。私は1988年に大学に入学しましたが、その3年前に男女雇用会均等法が施行されました。「女性も総合職などで『働ける』時代になる」と思っていたのですが、共働きを実現していくには多くのハードルがあることが分かりました。そこで、家庭内の性別役割分業などについて研究を始めたのです。
「男は仕事・女は家庭」を前提とすると共働き家庭では家事や子育てを「誰が担うのか」という問題に直面します。核家族化が進む中で、自然と女性の負担が大きくなります。以前と比べると家電や外部サービスなども進化して「家事時間」自体は減っています。ただ、数字には表れない「家事」もあります。だからといって50:50にすることが「平等」ではないと思います。要は自分ごととして「家事を分け合う・助け合う」という家庭内での分業意識があるかどうか。得手不得手もあるかと思いますが、家族関係の性別格差はそういうところから縮めていけるのではないでしょうか。
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授業では学生に「結婚観」についてのアンケートを15年ほど継続して取っています。結婚相手について男子学生は「家事ができる人」という回答が当初は多かったのですが、最近では「趣味が合う人」などの割合が多く「育休を取って子育てに関わりたい」という学生も増えています。一方で「非婚・就業」を希望する女子学生が増加しています。「パラサイトシングル」といった言葉もありますが、今の親子関係で心地良く、仕事と家庭の両立というジレンマを避けたい―そんな心理も垣間見えます。育った家庭の環境も影響していると思いますが、親や祖父母世代と「家族」の意識は変わってきているようです。
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横須賀市では中学生に「男女共同参画」についての副読本を作成してます。その中には「家事分担についてどう考えますか?」という項目があります。子どもの育ちの中で、家庭の影響は少なくありません。こうした啓発の取り組みから「気付き」が生まれれば、家庭内の性差の意識も変わるかもしれません。
「男女共同参画」というと、共働きや女性の社会進出といったイメージで語られることが多いのですが、本質は仕事や人生、家庭での役割において自分が「納得して選択できているか」というところではないでしょうか。社会環境や制度の整備はもちろんですが、そうした意識の変容を、次の世代につなげていければと思います。
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