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横須賀・三浦 コラム

公開日:2023.04.14

"海の隼"をあるく〜按針が見たニッポン〜
00 プロローグ 作・藤野浩章

 徳川家康がついに天下を統一し、太平な世を築くきっかけの一つとなった外国人がいる。三浦按針(あんじん)、その人だ。

 歴史ファンならずとも、横須賀市民にはお馴染みの人物だが、その数奇な生涯を描いた小説があった。今からおよそ24年前に刊行された「海の隼(はやぶさ)─参謀・三浦按針(ウイリアム・アダムス)」だ。現在は絶版で極めて入手困難なこの本が、間もなく電子書籍として復刊される。

 作者の大島昌宏(おおしままさひろ)は処女作「九頭竜川(くずりゅうがわ)」で新田次郎文学賞を受賞した後、中島三郎助(なかじまさぶろうすけ)、小栗上野介(こうずけのすけ)、そしてウイリアム・アダムスと、3人の偉人を小説化。「横須賀三部作」として世に送り出したが、1999年に鬼籍に入った。

 実は筆者は大島の息子だ。父はサラリーマンをしながら、50台半ばを過ぎて突如小説を書き始め、文学賞受賞後は作家生活に入った。当時の私はもちろん父を尊敬はしていたが、その仕事には関心が無く、何と今まで一冊も父の本を読んだことがない、ということを告白せねばならない。

 ところが、である。父が作家となった年齢に近づき、ふと「海の隼」を読んでみたら、これが面白いのだ。歳を重ねて歴史に興味が出てきたというのもあるが、立て続けに三部作を読むと、身内びいきを差し引いても傑作だと素直に思った。そこで電子書籍として復活させ、残そうと思い立ったのだ。

 本連載は、大島の本を通じて、横須賀に縁のある偉人の足跡をたどるものだ。その最初は、三浦按針。彼が訪れたであろう場所に足を運び、「海の隼」に登場する按針の言葉をきっかけにして、さまざまに想像をめぐらせたい。もちろん、同書はフィクションだ。そのため、歴史的事実とは異なる点が多々あるかと思うが、それについては数多くある他の書籍や研究に任せたい。ここではあくまでも、同書に基づいて自由に考えを膨らませることにする。

 今となっては、なぜこの場面でこういう説を取ったのか?などと父に聞かなかった事がつくづく悔やまれる。だからこれから始まる連載は、アダムスの功績を改めて知るだけではない。私にとっては、作家としての父の想いをたどる旅でもあるのだ。

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