横須賀市議選
自民２議席増で高まる存在感
維新も２議席　39人新しい顔ぶれ

支援者と笑顔で喜ぶ小幡氏（写真中央）
支援者から花束を受け取る大野氏
当選が決まり破顔の高橋氏
朴訥とした人柄の自然活動家
支援者と初当選を喜ぶ広仲氏

　統一地方選の後半戦、横須賀市議選（定数39）は４月23日、投開票され、39人の顔ぶれが決まった。投票率は前回（２０１９年）を２・38ポイント下回り40・41％と過去最低を更新。県議選（38・51％）とともに右肩下がりに歯止めがかからない。当選者の内訳は、現職30人に新人が９人。自民が改選前よりも２議席増の14議席を獲得したほか、新勢力の維新も２議席を確保。今後の議会の会派構成などに注目が集まる。

トップ当選

　午後10時ごろ、開票所にいる支援者から４０００票との一報を受け、ひとまず安堵の表情を見せた小幡沙央里氏。前回は５９９０票で全体２番目の得票。人口減と低投票率のなか、５１４４票でトップ当選を果たした。

　「誰もが暮らしやすいまち」を掲げ、選挙活動を展開した。街頭演説では子どもや福祉支援の当事者から多く声を掛けられたという。21年から県立保健福祉大の大学院で社会福祉を専攻。20代で市議になって３期目、「市民の声を聞き取るだけでなく、政策として反映させていく」と決意を新たにする。会派（よこすか未来会議）で積み重ねてきた政策提言のサイクルも深化させたい考えだ。

　告示日、選挙事務所に女性蔑視の内容が書かれた紙を投げ込まれた。改選で女性の議席は１増。見えない壁はまだあるが周囲の支えを力に前進していく。

現職議長

　現職の市議会議長である大野忠之氏は大矢部の事務所で支援者と一緒に待機し、結果を待った。神奈川県市議会議長会と中核市議会議長会の両会長にも就く身として、４期目の挑戦は勝つことより勝ち方にこだわった。１期目以来の選挙対策組織を設けて、フルスペックの戦いを展開。横須賀の課題を市民に伝え、他自治体の先進的な取り組みを見てきた経験を市政に活かしていくことを精力的に訴えた。

　一方で自民党市議団全体を俯瞰して見る立場でもある。自身の票の行方だけでなく、立候補した14人の状況に気をもみ、全員当選の報を耳にして安堵の表情を浮かべた。支援者を前に大野氏は「議長会で得た経験を横須賀市議会にフィードバックしていく。４期目もしっかり働く」と力強く語った。

自民初女性

　横須賀青年会議所で初の女性理事長を務めた経験のある高橋泉氏は、自民党が市議選で初めて擁立した女性候補。開票結果を待つ間は終始緊張した様子を見せたが、当選が決まると笑顔で支援者と喜びを分かち合った。

　青年会議所での活動経験から児童虐待に対して問題意識を抱く。また、子育てがしやすい環境づくりの一環として、ひとり親世帯へのケアにも力を入れたいとしている。

　「自民初の女性市議」というトピックについては「女性だからと言って特別な政策を立てるつもりはない」と語り、住民それぞれの視点に立った活動をしていくことを強調。「未来の子供たちがワクワクするような横須賀にするため、地域の皆さんと一緒に成長していきたい」と意気込みを話した。

一点突破

　スローガンは「自然環境派の議員が１人いたっていいじゃない！」

　自然の魅力を伝えようとする候補者は存在するが、保護活動に真剣に向き合っている人は誰もいない。里山再生や環境学習の一線で活動してきた天白牧夫氏の立候補動機はこの一点。「ならば自分が」と無謀とも思える戦いに挑み、有権者の支持を集めた。

　横須賀の生態系は危機的な状況にあるという。在来生物の壊滅的な減少に外来生物の繁殖。耕作放棄地の増加など里山再生も足踏み状態が続き、「目を背けることが出来ない」と思いを募らせていった。

　主張は自身のホームページと選挙公報、ポスターのみ。異色の”発信しない選挙”で２２１４票を獲得。「自分のこれまでの活動を知る人たちから信任を得た」と自己分析する。市議会では環境政策の一点突破で挑む。

「維新」躍進

　市内外で介護事業所を展開し、高齢者福祉の拡充を訴える広仲信太郎氏と元鎌倉市議の安川健人氏が日本維新の会から出馬。ともに約２千票を獲得して、同党では横須賀市議会初となる２議席を得て、勢力拡大の足掛かりを掴んだ。

　開票速報を固唾をのんで見守っていた広仲氏は午前０時過ぎ、当選確実を確認すると、初めての選挙を戦い抜いた支援者と抱き合い、ガッツポーズで喜びを爆発させた。「期待して託してもらった票の重さを感じる。ここからがスタートであり、地域福祉などの課題解決に向けて、最大限頑張りたい」と意欲を見せた。

　また、安川氏は「現状維持・微修正しかできない空気に対する不満が、改革保守の維新への期待となっているように感じ、これが追い風になった」と選挙活動を総括。神奈川維新の会の強力なバックアップも２議席獲得の躍進につながったとコメントした。

　今後、同党が旗印に掲げる行財政改革「身を切る改革」を横須賀へ浸透、実行していきたいとしている。