横須賀・三浦 コラム
公開日:2023.06.30
"海の隼"をあるく
〜按針が見たニッポン〜10 浦賀編(1)作・藤野浩章
"我れ知らず泪(なみだ)が溢(あふ)れ、港の風景がかすんだ"
◇
大坂・堺の港を出港したリーフデ号。アダムスたちに加えて角倉(すみのくら)了以(りょうい)など50名ほどが乗り込み、さらに軍艦も2隻同伴するという厳重な航海となったが、3日目の朝、ついに浦賀へ到着する。
しかしここまでの航海は決して順調なものではなかった。2日目に駿河湾にさしかかると海は荒れ、修理したばかりの2本のマストが折れてしまったのだ。日本人たちは皆不安になったが、アダムスは動じなかった。「マゼラン海峡を吹き抜けた烈風、南太平洋で遭遇した大嵐を思えばさしたる風ではない」というのだ。こうして歴戦の航海長は残った1本のマストで無事、リーフデ号を操ったのだ。
こうしてやって来た浦賀。その港口を見て、アダムスは冒頭の感想を述べる。奥に向かって細く長い水路が続いているのが、故郷であるイギリス・テムズ川の河口を想起させたというのだ。
後のペリー艦隊も川と勘違いしたというその風景はどんなものなのか、浦賀を周遊するイベントクルーズに乗ってみた。当時とは地形が違うだろうが、確かに埋め立て地が無ければ川の河口に見えて、少なくともこの先に港があるというのは初見では判別しにくいかもしれない。
アダムスはこうして望郷の念を抱くが、同時に"先客"の存在にも気づく。「右手の小高い山の中腹、屋根に十字を掲げた家」が目に飛び込んできたのだ。「南蛮寺(なんばんでら)」と呼ばれた教会。敵対する旧教の広まりを感じながら、彼は浦賀の地に降り立ったのだった。
ピックアップ
意見広告・議会報告
横須賀・三浦 コラムの新着記事
コラム
求人特集
- LINE・メール版 タウンニュース読者限定
毎月計30名様に
Amazonギフトカード
プレゼント! -

あなたの街の話題のニュースや
お得な情報などを、LINEやメールで
無料でお届けします。
通知で見逃しも防げて便利です!












