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横須賀・三浦 社会

公開日:2026.09.29

台風25号 土砂流入と水路崩壊 復旧困難 横須賀・三浦の農家襲った爪痕

  • 崖の崩落で樹木を伴う大量の土砂が畑に侵入=林地区

    崖の崩落で樹木を伴う大量の土砂が畑に侵入=林地区

 台風25号がもたらした豪雨と土砂崩れは、県内有数の露地野菜の産地である横須賀・三浦の一部地域に壊滅的な被害をもたらした。

 横須賀市林地区で約2haの農地を手がける農家の鈴木優也さんの畑では、全体の約3分の1にあたる農地が崩落や土砂流入に見舞われ、立ち入りすらできない状態となっている。

 キャベツや大根の作付けシーズン突入に合わせて、防風ネットの張り込みや排水溝の清掃といった事前の備えを行っていたが、斜面からの土砂流出や冠水設備の破断が相次ぎ、作業再開の目途が立たない。

 特に深刻なのが、同地区の農家70戸以上で組織する「林地区冠水組合」が半世紀以上にわたり維持管理してきた共同農業用水路の損壊だ。地下水を組み上げ、各畑へ直接注水できる同地区特有のインフラが途絶。「ポンプ場から水を流すパイプが大破して絶望的な状況となっている」と鈴木さんは途方に暮れる。今後のキャベツ定植作業などに欠かせない散水が不可能になったという。

 水路の完全修繕には莫大な費用と大規模な工事が必要とみられるが、各農家とも目の前の畑の復旧に追われ、対応を考える余裕すらない。二次災害の危険もあり、「自分たちの手でできる作業は限界を超えている。大型重機を投入した土砂撤去など、行政の支援がなければ立ち上がれない」と声を落とした。

 被害はこの先、地域経済にも暗い影を落とすことになりそうだ。例年9月末から10月上旬は、同地域の一番の稼ぎ頭である大根の種まきやキャベツの定植の最盛期にあたる。だが、台風襲来前からの長雨により畑全体が泥沼化しており、トラクターなどの農機具が進入できない状態が続いている。こうした作付けの大幅な遅れは出荷時期の過度な偏りをもたらし、一時的な品薄による野菜価格の高騰やその後の需給バランスの崩壊を引き起こしかねない。

 被害を免れた畑に向かうための農道が土砂で塞がれているため、車の進入にも支障をきたしている。現在収穫期を迎えているサツマイモも畑がぬかるんでいるため収穫機を入れることができず、親交のある農業高校の生徒らの助けを借りて手掘りで作業を進めた。現時点では、人海戦術が頼みの綱だ。

 鈴木さんが繋がりのある農家に聞いたところ、隣接する長井や三浦市でも同様の状況だという。

 そうした中で、懸念されるのが「離農の加速」だ。経営的な打撃ははかり知れず、若手農家の間で精神的ダメージが広がっているほか、高齢農家からは「今年はもう諦める」との声も漏れ始めている。この窮状に対して、行政に求めるのは「現場へアクセスする道路の確保と重機の手配、そして継続的な営農支援」と鈴木さん。

 横須賀市農水産業振興課は、想定を超える前例のない規模の被害に対し、全容把握と国・県との支援策確認を並行して行っており、早期対応を目指している。しかし、激甚災害指定がなされても個別農家への直接適用は難しい見通しであり、現場対応に苦慮している姿がうかがえる。

 横須賀・三浦の両市では先週、災害ボランティアセンターが開設され、受け入れに向けて準備を進めている。「安全な場所での土砂の掻き出しや手掘り収穫など、ボランティアの手があれば本当にありがたい」と鈴木さんは期待を寄せる。一方で、長期戦になることを覚悟している。だからこそ、口をついて出るのはこの願いだ。「これから出荷される三浦半島の野菜を『食べて応援』してほしい─」。消費者へ切実な思いを訴えた。

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