三浦の散歩道 〈第100回〉 みうら観光ボランティアガイド協会
浄土宗の寺院「龍圓山福泉寺」入口前の道をわずかに行き、左折して、海岸へと向かいます。やがて、「ビーチバム」の看板にしたがって右折をすると、海が見えてきます。その途中の道際にある家の塀に犬や兎(うさぎ)、リスなど小動物の置物が飾られていて、思わず頰(ほほ)笑(え)んでしまいました。
やがて、前方が開け、左手の海側には、レストランが見え、右側に「三戸浜ヨットクラブ」と書かれた柵と内側に舟が見えます。さらに進むと、南国のヤシを想わせる木も植えられ、砂浜もあり、相模湾が広々と見渡せる所へとやって来ました。
さらに歩を進めて行くと砂地から岩場へと海辺は変わってきました。右側の草深い崖も岩屋を想わせる海蝕による洞穴も見えて来ます。中には、人間が堀削したような大きな洞穴もあります。
平成十九年の十月廿五日付の『神奈川新聞』25面に次のような記事が掲載されていました。
「六十年ほど前までは南側の丘(筆子註、「黒崎の鼻」から見ての方角)全体が『洞窟砲台』と呼ばれる要塞地帯だった。丘の内部は細いトンネルが張り巡らされ、大量の弾薬が置かれ、銃眼が設けられ、そして大砲が海を向いていた。」とあります。
たしかに、「唐ヶ原」と呼ばれる高地の海側の丘の海辺に面した箇所は洞穴が五、六箇所も見られます。
歩をさらに進め、少し難所のところを過ぎますと、広々とした浜へ至ります。岩に挟まれた水際も静かな小波(さざなみ)を受けて静寂さを感じさせます。
かつて、NHKの大河ドラマ『坂本龍馬』で、主人公の龍馬が妻である「お龍(りょう)さん」と海を眺めながら語り合う場面が、ここの場所で撮影されたのではないかと、筆子は思っています。
海に沿って北側に高い丘陵といっては、少々、オーバーですが…その海へ突き出した高所が「黒崎の鼻」と呼ばれる処です。海に面した正面に相模湾の向こう湘南の地や江ノ島が真近に見られます。晴れた日には富士山も眺められます。目を左に転ずると、伊豆半島や大島までも眺望できます。夕方、太陽が遠く相模嶺(ね)に沈みゆくとき、海上に光の帯をひくさまは、なんとも言えない風情を感じさせます。目を内側、陸地に向かって転ずると、かつて、宮田湊(みなと)と言われた入江が、今では埋めたてられて商業地などになっている状況が眺められます。その入江の中にあった島、「波島(なしま)」も小山のような草木のおい茂った藪に見えます。
かつて、斉藤茂吉が『三崎行』の本で詠じた「紺に照る海と海との中やまにみづうみありてかぎろひのぼる」の静かな入江の姿はなく、ただ想像の世界となってしまいました。
笹と芒に覆われた細い道を通って「黒崎原」へと歩を進めます。 (つづく)
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