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三浦版 公開:2018年6月8日 エリアトップへ

連載 第17回「飴屋踊りのこと」 三浦の咄(はなし)いろいろ みうら観光ボランティアガイド 田中健介

公開:2018年6月8日

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 北原白秋の随筆『漁村の秋』の中に、次のような文章があります。

 「色々の紅い小旗を挿(さ)した盥(たらい)のやうなものを頭に載せて、女の飴屋(あめや)が小さな鉦(かね)を叩いて遣(や)って来るのもその頃でした。チンカラチンカラ、それが黄色な秋陽の中で賑やかに囃(はや)し立てると、何処からともなく顔の真っ黒い浜の子どもたちが群(むらが)って来て、ウジャウジャ蹤(つ)いて行くのです。」とあります。

 この文章から思い起こしたのは、「菊名」の地にある「白山神社」の例祭(十月)の奉納芸能として「飴屋踊り」が演じられていることです。

 昭和三十八年、県立図書館で発行された『神奈川の歴史』(県下の民俗篇下)の中に永田衡吉氏の文として、「本県を初め、埼玉・千葉・東京方面にある、手踊または地狂言の一種である。」として「アメヤ踊」というのは本県だけらしい。」と記されています。さらに「実際に演じているのは、三浦市菊名・上宮田・鎌倉材木座・逗子・横須賀の長井」などをあげています。さらに、「江戸末期か、明治初期に、三浦・鎌倉系のものは房総から、横浜の農村系は江戸から流入したものと思われる。」として、「街頭の飴屋と、地方歌舞伎の役者たちが伝播した。」とあります。また、「さいわいに、菊名と上宮田の飴屋踊は、カブキに堕(おと)せず、念仏に染まず、本来の舞態を、よく温存していると思う。」とも書かれています。

 昔、菊名の児童会館一帯は麦畑で道路からお宮がよく見え、麦を刈り取った後、その畑を借りて舞台を造り、近隣より沢山の見物客が来て夜遅くまで賑わっていた、とのことで、昭和三十年十一月一日に「神奈川県無形文化財」に、昭和五十一年十月十九日に「指定無形民俗文化財」に登録され、毎年行われていましたが、保存会の会員の高齢化と減少のため、平成元年を境にして地元での上演が困難となってしまいました。しかし、平成二十年、地元菊名の女性の方々が飴屋踊りに興味を持たれ、習ってみたいとの申し出があり、保存会の指導のもと、練習に練習を重ね、地元での上演が再開されるようになりました。

 内容は「手踊り」と「段物」に分かれ、「手踊り」とは、踊りの中心の演目でセリフが少し入ります。「段物」とは、歌舞伎・地狂言などを取り入れたもので、セリフが入った芝居物です。

 「手踊り」の演目は「白松粉屋」・「新川」・「かきがら」・「子守」・「細田(ほそだの)奴(やっこ)」などで、「段物」は「笠松峠」・「五段目」(忠臣蔵のうち)・「豊川利生記」などがあります。

 今年の十月にも「あめや踊り」が見られるものと期待しています。

(つづく)
 

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