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東京大学三崎臨海実験所異聞〜団夫妻が残したもの〜 文・日下部順治その19 実験所を支えた地元の2人【4】

掲載号:2019年2月8日号

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 団勝磨の自伝「ウニと語る」から重さんの仕事ぶりをお伝えします。

 少し専門的になりますが、この書にコマチの産卵という小節があります。「コマチというのは、ウミシダの仲間に属しているウニの祖先のような古い棘皮(きょくひ)動物です。この動物が毎年9月と10月の境に産卵することは、既に調査済でした。しかし研究者達は採集についてはズブの素人でした。そこで9月になって、重さんと一緒に小網代の湾口に採集に行きました。採って来たコマチを実験室で毎日見ていても、何事も起こらない。20日位すると少々飽きてきて、余り見ることもなくなった。するとある日の午後2時頃重さんが飛んで来て、どうも雄が放精しているようだと知らせてくれた。私達が飽きても、重さんは毎日見ていたのである。」――この様に重さんの観察力は、研究者達の上を行っていたのです。

 続けて勝磨はこう述べています。「今から考えると、その当時は、私達は採集の仕方も、実験室までの運搬の方法も、下手であったので、実験室に持ち帰ったコマチは、いろいろ障害を受けていたらしく、そのため全部の動物が、同時に卵を産むことなく、三日間にわたって、ボツボツと産んだのである。その後に飼い方がうまくなってからは、自然の生産地で観察したように、一度に産むのが原則であることがわかった。小網代の湾口にいる何百何千のコマチが、一年のある日の午後3時を期して、一斉に産卵するということは、全く驚くべきことである。翌年には、予定日に私達は、実験室で観察したが、重さんには、海で観察してもらった。天然の生息地で産卵を見てコーフンした重さんは、帰ってきてこういった。『これまで何百年にわたって、小網代の村に、何百何千の漁師がいたか知らないが、この産卵を見たのは俺一人だべぇ』と」。一介の採集人の枠を超え、勝磨の共同研究者であり、重さん無くして、研究成果は無かったと言えます。

 「一、二年してコマチの不思議な産卵習性が伝えられると、毎年本郷の若い連中が、見物にやって来た。彼らはこれをコマチ祭りと呼んだ」。勝磨は40年余観察を続け、海外から三崎を訪れる人も出てきました。

 勝磨が渡米した際、ワシントン大学附属実験所のアーノルド所長は、「団はあたかも動物と話ができるようだ」と評し、本人もそれを誇りとしたといいます。その背景にはこうした重さんの存在があったのです。

(つづく)
 

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