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東京大学三崎臨海実験所異聞〜団夫妻が残したもの〜 文・日下部順治、吉本尚その24 番外編【1】

掲載号:2019年7月12日号

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 ここからは番外編と題し、団勝磨の都立大学時代の教え子で分子生物学を専攻していた吉本尚氏(小網代在住)にお願いし、夫妻と親交のあった当時のエピソードを披露いただきます。

■  ■  ■

 私は大学時代に團先生の教えを受け、その関係でわずかひと夏だけながらもこの実験所に寝泊まりして、ウニやホヤなど海の生物の発生実験を行ったという貴重な経験があります。

 とはいえ、私の学生時代(昭和30年代末)といえばもう半世紀以上も前のこと。記憶の薄れかけた部分も多々あるのはやむを得ませんが、これを機会に当時実際に見たり経験した事柄を思い起こしながら少し述べてみたいと思います。

 諸磯湾は富士山の雄大な姿を真正面に望める景勝の地ですが、富士を正面にその右手の湾口あたりを望遠しますと、そこに黄茶色煉瓦(れんが)造りの古めかしい建物が目に留まります。その瀟洒(しょうしゃ)な建物こそが、油壺にある三崎臨海実験所の当時の実験棟で、昭和の初期に建てられた名建築として誠に貴重な存在です。戦時中は軍事施設(特攻潜水艦の基地)として海軍に接収されていたことから、戦後直ちに進駐して来た米軍による旧日本軍事施設の破壊方針からそれも直ちに取り壊される運命にあったのですが、その危機を間一髪で救ったのが有名な團勝磨氏の貼紙であり、その逸話については本欄で既に詳しく述べられているところです。

 その建物は海越しに望遠するだけでも惚れ惚れするような重厚な雰囲気を漂わせていますが、それは私にとっても大変に思い出深い場所であり、内部は黒光りする木の古めかしい雰囲気が漂い、海に面してズラリと並ぶ上下開閉式の大窓は外から豊富な光を取り込んでくれるので、その窓辺の実験テーブルは外部光源を鏡で取り込む旧式顕微鏡での観察には正に絶好の場所でした。

 写真はいかにも楽しそうに研究結果について議論しておられる團夫婦のお姿。私が実際に教えを受けた頃はもう少しお年を召しておられましたが、ジーンさんは髪の毛を団子に結んだ実にラフなお姿で研究所の敷地内を飄々と歩き回っておられたのが印象に残っています。

(つづく)
 

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