三浦半島 草花歳時記 第10回 小野嵐山も愛用した?「ハマゴウ」 文・写真 金子昇
この時期、三浦半島の海辺には美しい淡青紫色(中心部は暗赤色)の花、「ハマゴウ」が見られます。茎は砂浜を這うように四方へ広がっていきます。背丈が低く草本状のようですが、クマツヅラ科の立派な樹木で、伸びた茎(ランナー)からは根を出し体を支えています。
名の由来は、枝が這うので「浜這い」(はまばい)から「ハマゴウ」へと転訛(てんか)していきました。全体に芳香があり、昔は樹皮や葉の粉末で香や線香をつくりました。江戸時代の草本学者・小野嵐山は、葉を燃やしてその香気を仏に捧げることから「浜香」とつけたといいます。果実を枕に入れると安眠できるようです。
地方名として、佐渡の「浜柳」、枕草子の中にも「遠江の花柳」と記されています。八丈島ではゴーグル(水中眼鏡)が曇ると、この葉で拭って除くので「メガネフキ」と呼んでいます。
黒みを帯びた球形の果実は、カンフルなどの精油を含み、消炎剤、強壮剤、清涼剤等の漢方薬「蔓刑子」(まんけいし)に使われています。
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