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連載 第70回「三浦古尋録その【7】」 三浦の咄(はなし)いろいろ みうら観光ボランティアガイド 田中健介

掲載号:2020年11月6日号

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森近くのキャベツ畑
森近くのキャベツ畑

 『三浦古尋録』の「金田村」の項に、次のような話が記載されています。話の内容から江戸時代の話ではなく、中世まで遡(さかのぼ)っての話なのでしょう。

 近頃、ここの民に地頭(じとう)(鎌倉時代、荘園の管理と治安維持、租税の徴収に当たった職)から「常々父母ヲ大切ニ致シ、少シニテモ親ノ申ス事ニ背(そむ)クコトナシ」との触文(ふれぶみ)が出されたことがあったのでしょう。ある日、村中(じゅう)の者が庄屋(しょうや)(名主)の家で集会が開かれるとのことで、村人が参集することがありました。あいにく、その日は雨あがりの日で路地も水溜まりがあって歩きにくい日でもあったのです。

 その集会に参加しようとした、ある青年は悪路のため「下駄を履いて行けば」と母親は言ったのですが、父親は「下駄を履くのは不礼であるから草履(ぞうり)で参るべきだ。」と言うのです。そこで青年は両親の心を大切に思い、草履と下駄を片方ずつ履(は)いて庄屋の所へと出かけたのです。そこに集まっていた村人は口を揃えて「失礼ノ由(よし)」と、この有様を咎(とが)めたのです。それに対して青年は「父母の教えです。」と答えたのでした。

 この話が地頭所に聞こえたでしょう。すると地頭は、青年等(ら)三人に「三人扶待米(ふちまい)」を下された。と言う話です。

 さらに、逗子の桜山にての話です。

 「御最期(みさいご)川(現田越川)の橋ノ辺ニテ往来ノ者ニ草履、草鞋(わらじ)ヲ作リテ売リ居(おり)シ辻商人」が居て、ある時、橋が大破した折り、郡中の助力を受けて橋の架け替をしようとした時、その辻商人が「橋ノ普請ノ足(たし)ニ」と、五両を提供したことを知った地頭は「一人扶持」を下されたというのです。

 また、次のような話も記載されています。

 ある男が、「農業ニ精ヲ出シ、朝ハ未明(みめい)ニ野ニ出(いで)、暮合(くれあい)ニモ人普(ひとなみ)ヨリ遅ク宿ニ帰ル。」そのことを村の者は「遅仕舞(おそしまい)ト字名(あざな)シタ」ということが、地頭に聞こえて、その男に「一人扶持ヲ下サレタ」と言うのです。

 「古尋録」の筆者は、「陰徳(世間に知られない立派な行為)有リハ陽報(はっきりと、よい報(むく)いの現れ)有リト、天理(天が万物を創造し、支配する道理)ニ叶(かな)ヒシ時ハ幸(さち)ノ至ルコト此(こ)ノ如(ごと)シ也(なり)」と記述されています。

 現在でも、人のため、世のために力を尽くすことによって、多くの人々の幸福につながるのでしょう。まさに、「陰徳あれば陽報あり」なのです。

(つづく)
 

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