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三浦 コラム

公開日:2023.01.01

三浦半島 草花歳時記
正月特別編「千両万両有り通し」
文・写真 金子昇

 「万両は兎の眼持ち赤きかな」(加賀千代女)

 明けましておめでとうございます。お正月に飾る一つ「センリョウ・マンリョウ・アリドオシ」の話です。

 昔から赤い実が目出度い時に使われ、赤い実をつける「センリョウ・マンリョウ・アリドオシ」の3種を寄せ植えにして、正月の飾りとする習わしがありました。この3種はいずれも低木で、赤い実と常緑の葉が美しいので、花の少ない冬には盆栽に最適でした。

 江戸後期、庶民の文化の一つ園芸が盛んになり、小野嵐山の園芸文献に「花家に多くあり、葉は百両金に似て短く...」と記されており、花家をさらに拡大解釈して「一万両金」と名づけたといいます。その後、別の赤い実を持つ「センリョウ」には万両に対して「千両」の名、さらに小さな「アリドオシ」には「一両」の名がつけられました。ちなみに百両は「カラタチバナ」、十両は「ヤブコウジ」につけられています。なお、アリドオシの名の由来は、茎に鋭い棘を持ち、小さなアリでも刺し貫くという説と、棘が多く出ているのでアリのように小さな虫でないと通り抜けられないという説とがあります。

 「千両万両有り通し」とは「お金は一年中いつも有る」という意味です。

 マンリョウの実は葉の裏に隠れるようにつき、センリョウは枝の先端につきます。これは万両(一万円札に例えて)は大切に財布の奥に隠しておくけれど、千両(千円札に例えて)はすぐ出しやすいようにという配慮からでしょうか。

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