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三浦 コラム

公開日:2024.01.01

三浦半島 草花歳時記
正月特別編 ヨハイノエタ「ウラジロ」
文・写真 金子昇

 明けましておめでとうございます。お正月に飾るシダ植物の「ウラジロ」の話です。

 昔はシダ(羊歯)といえば「ウラジロ」を指し、羊歯の固有名詞でした。正月用のお飾りや鏡餅には、今でもこのウラジロの葉が必ず添えられています。

 室町時代(15世紀)の文献に「歯朶(ヨハイノエタ)正月用之」とあります。歯朶の「歯」は「ヨワイ」のことで「寿令」(年齢)を表し、「朶」はしなやかに垂れた枝(※注)のことで、「長生きの象徴」および「子孫の繁昌(分家に分かれて繁昌)」を意味しています。

 ウラジロは別名「諸向き」(モロムキ)といい、羽状葉が左右対称に向かい合ってバランスが良くとれ、その形状から「夫婦和合」、さらに葉の離面が白いことから「共に白髪まで」に通じています。そこでウラジロは縁起の良い植物としてみなされ、正月の飾りに利用されてきました。

 またの別名を「穂長」(ホナガ)といい、長寿または稲穂の豊かさを表すことから、正月の飾りに利用したり、祭神を迎える依代の門松や神域を示す注連縄にも、除魔の力を持つウラジロが利用されたりしました。

(※注)「万朶の桜」(多くの枝垂れ桜を表す)

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