足にフィンをつけて海中を奥深く潜るフリーダイビング。その魅力に取りつかれた女性の熱意が実り、葉山に全国でも珍しい「町公認スポット」が誕生した。
6年前から取り組んでいたのは町在住で2011年から21年まで日本代表選手として世界大会にも出場していた経歴を持つフリーダイバー・武藤由紀さん。現在は葉山を中心に、三浦半島で素潜りやフリーダイビングスクールを主宰している。
ポイントは名島沖で、水深約40m。「葉山の街並みを見ながら潜るのが夢でした」。目を輝かせて語る武藤さんだが、当然、すんなり事が進んだわけではなかった。
大自然の中で邪念を払い、没頭できるフリーダイビングは近年、人気が高まっている。ただ、実際に潜れる場所が少ないのが現状で、十分な練習ができるプールは全国でも数えるほど。海の場合は地形や潮の流れといった自然条件のほか、漁業者や他の海岸利用者との調整、そして何より安全確保が求められる。すでに漁協と連携しているダイビングショップ・ナナの佐藤輝さんらの協力もあり、徐々に信頼関係を構築。「漁師さんの協力なしではあり得なかったこと。潜るのがそんなに面白いのか?と冗談半分で言われていたけれど、最後は安全なポイントを一緒に探してくれて本当にありがたい」と語る。
先月には役場を訪れ山梨崇仁町長に報告した=写真左。山梨町長は「環境問題も絡めて、海の中の魅力や変化を広めてほしい」とエールを送った。武藤さんは「漁業者や町と連携して潜れる場所が首都圏にできたことは貴重。まずは地元の人にもっとフリーダイビングの楽しさを知ってほしいし、次世代にも引き継がれるよう、しっかりと土壌を作っていきたい」とし、「子どもたちも巻き込みつつ、葉山の海を大切にしながら盛り上げていきたい」と笑顔で話した。