第12回湯河原文学賞の最優秀賞を受賞した 工藤 哲さん 本鵠沼在住
小説家に憧れて
○…国木田独歩や夏目漱石など多くの文豪と縁が深い湯河原町が主催する文学賞で、最優秀賞を獲得した。ミステリー作家の西村京太郎氏も選考に協力する賞には、全国の作家から135編が寄せられた。「こうして一番になることは初めてなので、とても嬉しい。自信にもなったし、これから小説を書き続ける勇気をもらった」と喜びを語る。
○…小説家になることが中学生からの憧れで、挑戦をしてみようと決意したのは10年ほど前になる。アイディアは浮かぶが、形にならない日々があり、本格的に書き始めたのが2、3年前。子どもの頃に読んだ、横溝正史や江戸川乱歩のようなミステリーが好きで、自身の作風にも影響が大きいのだとか。「通勤の電車の中や眠る前の短い時間でも、読者の活力になるような小説が書けたら」と理想を語る。
○…受賞作は「お客さん、どちらまで?」という短編。最愛の息子をひき逃げ事件で亡くしたタクシードライバーの母。ある日、タクシーにひき逃げ犯が偶然にも乗車する。思わず『はっ』と驚くエピソードで物語は始まる。審査員からは「犯人の人間性や母子の愛情に触れることで変わっていく主人公の感情に引き込まれる作品」と高い評価を得た。
○…山口県宇部市で生まれ育つ。東京の大学に通い、その後、コピーライター、作詞家という職業に就く。一般的には憧れとも呼べる職業だが、本人は「本当に運が良く歩んでこられた」と謙遜。「将来は自分の作品が映画になって、主題歌を作詞したい」と夢をふくらませる。藤沢には、中1になる息子が生まれたときに、なるべく自然の中で育てたいと越して来た。「時々、海辺を散歩すると海の広大さに癒される」。作家として新たな船出の時期、自身の前には、希望に広がる海が見えているのかもしれない。
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