パリで開催される「春の日本現代美術展」にイラスト画『月あかりII』を出展する 中西 隆浩さん 善行在住 52歳
イラストに情熱込め
○…満月を背にこんもりと佇む江の島と、月光に映し出されるかつての灯台、きらめく水面、対岸を走る幻想的な江ノ電―。観るものを物語の世界へと誘うような『月あかりII』が関係者の目に留まり、パリでの展示が決まった。「作家としてのキャリアはまだまだ」と控えめだが、その豊かな世界観は多くのフランス人を魅了するに違いない。
〇…鵠沼生まれの善行育ち。人並み程度に絵に親しんできたが、学生時代はアメフトに打ち込むなど、絵とは縁遠い日々だった。大学卒業後は「絵を仕事にしたい」と独学でイラストを学び、制作会社に持ち込むものの、何度も断られた。次第にそのひたむきさに社長が根負けし、社員として働くことに。「すぐに描かせてもらえなかったけれど、制作進行やマネジメント、営業を通じて多くのことを学んだ」と穏やかに微笑む。
〇…「そろそろ自分の絵を描きたい―」と、93年にイラストレーターとして独立。夢への第一歩を踏み出した。手描きのタッチを大切にしつつ、デジタルを駆使し、広告や本の挿絵といった細かな仕事にも一つひとつ真摯に対峙する。近年は駅や空港、商業施設の大きなプロジェクトも手掛けるように。「商業イラストはお客様ありき。勝手な解釈やアート観を持ち込まずに、先方が伝えたいことを的確に表現することが大切」と、プロ意識をのぞかせる。
〇…「描きたくても、描けなかった」時代の情熱が静かに熟し、10年前から「にーたか」の名で作家活動に精を出す。長年あたためてきたアイデアやスケッチに、命が吹き込まれ、作品には躍動感あふれる世界が広がる。モチーフの多くは江の島だが、昨年は地元善行の歩道パネルも手掛けた。「観た人が物語や音楽などを自由に感じてもらえたら。藤沢の北部をモチーフとした作品や版画にも挑戦してみたい」。瞳を輝かせて微笑む目線の先には、多くの人の心をつかむだろう多彩な世界が広がっている。
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