12月22日からの工芸展に出品する日本工芸会正会員・特待者の人形作家 前田金彌(きんや)さん 極楽寺在住 83歳
まるい人柄が惹きつける
○…記念すべき20回目の展覧会を12月22日から鎌倉芸術館で開く、日本工芸会東日本支部の神奈川研究会。その副会長として鎌倉で伝統工芸の発展に寄与してきた。日本工芸会の正会員で特待者、衣裳人形づくりは60年近い経歴を持つ。「金彌という名前は曾祖父さんと祖父さんの名前に由来しているんだよ」と語る口調は、どこかユーモラス。
○…今回の展覧会には、東日本大震災に思いを巡らしつくり上げた「安らけく」などをはじめ、数点出品するという。「震災で亡くなった人、残った人。みんなが少しでも安らいでもらえたら」と話す。人形の他にも、会場には陶芸や染織、漆芸に金工、木竹など確かな腕を持った作家による約60点が並ぶ。会員は「いかに良いものを作ろうか、追究している人が多い」。
○…横須賀市公郷町で生まれ、その後は父の仕事の関係で東京に。難関だった当時の東京府立第十一中学校で学び、医大に進むも衣裳人形の人間国宝・野口園生の個展で衝撃を受け、「先生の作品のような人形をつくりたい」と入門を決意。門を叩くこと数知れず「弟子入りするまでに1年ほどかかりましたね」と振り返る。鎌倉には知人に誘われ、四十数年前に越してきた。「駅を降りた時、潮の香りがした」と都会にない環境に魅かれた。それ以来、自身の個展で出会った米国人の翻訳家、ゲージさんと生活を共にする。
○…「お酒が好き。だけど今はだめ」と苦笑い。銀座和光ホールで数年置きに開いている個展はライフワークに。すでに8回を数える。「外出するときは着物。紬が好みです」と衣裳にもこだわる。彫刻や絵画など展覧会巡りが趣味で、特に「独特な雰囲気を持つ日本画に魅かれる」という。
○…「いい人形をつくりたい」一心で、今までもこれからも創作活動に勤しむ。「おごらない園生先生の人柄を今も尊敬している」。その姿勢は見事に引き継がれている。