ムスリム観光客をもてなす際に欠かせない「ハラール」への対応。認証団体が乱立し、コストも手間もかかるため、中小事業者がムスリム対応をためらう一因となっている。一方でイスラーム教への理解と気遣いでもてなそうという流れも広がっている。県や市内飲食店の取り組みからヒントを探る。
乱立する認証団体
東南アジア各国のムスリム観光客の急増を受けて、北海道、京都、沖縄などで対応マニュアルやガイドブックが発行されるなど、誘客活動が活発化している。それに伴い発生したのが「ハラールブーム」とでも呼べる現象だ。
「ハラール」とは「許された」という意味。「豚肉やアルコールを口にしない」といったイスラーム文化に対応する一種のパスポートとして認証が不可欠と喧伝され、ホテルや大手飲食チェーンなどがこぞって取得を目指す一方、中小事業者にはハードルが高くなる要因となっている。
今年度から、県と協働で観光関連事業者を対象にムスリム接遇人材育成事業を行っている慶應義塾大学SFC研究所イスラーム研究・ラボの奥田敦教授は「ムスリム向けの商品を輸出するのでない限り必須ではない」と話し、行き過ぎた「認証主義」に警鐘を鳴らす。
奥田教授によれば、現在国内には100を超える認証団体があるとされるものの、統一した基準のようなものはなく、その判断は団体によっても異なる。8月末に観光庁が発表した「ムスリムおもてなしガイドブック」でも「ハラール認証」という言葉は出てこない。
「認証基準はあくまでイスラーム法解釈のひとつ。『厳しいから正しい』というわけではないことを知って」と奥田教授は呼びかける。
「少しの工夫で対応」
ハラール認証を受けずにムスリム観光客を受け入れている店もある。鎌倉大仏殿高徳院向かいの関西風うどん店「千代仁」では、前日までの連絡でムスリム向けの食事を提供している。
「肉とアルコールに気をつけて調味料を工夫すれば、和食店の多くは対応可能では」と話す店主の前田仁さん。出汁を一から取っている同店では要望があった際、みりんを使わず、アルコール処理されていない醤油を使用する。「今ではベジタリアンやアレルギーなど、どの飲食店も気をつけている。その延長です」。
「情報提供の準備を」
奥田教授は「ハラール=認証というイメージが強いが、肝心なのはイスラーム文化に配慮し、もてなす心。受け入れる側が適切な情報を提供すれば、ムスリム各人が自身の信仰に照らし合わせて判断する。そのための準備が今必要とされている」と話す。
同研究所はムスリム向けレストランブックを作成するプロジェクトなどを行っており、関心のある事業者や団体等を募っている。
問い合わせは事務局【メール】islamlab_sfc@googlegroups.comへ。
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