鎌倉のとっておき〈第13回〉 鎌倉の古地図
鎌倉の魅力の一つは旧跡・名勝を訪ね、四季の自然を味わいながらその歴史を感じられることがある。鎌倉の歴史に興味を持ち訪れる人も多いであろう。
しかし実際に鎌倉の街を歩くと飲食店・お土産屋さんが建ち並び、谷戸の隅々まで宅地化が進んでいて、中世都市鎌倉を想像することは難しい。そのため、私は左上の古地図を参考にしてかつての鎌倉の歴史を感じる事にしている。
この古地図は、鎌倉の実測では最も古い明治15年実測のものである。鎌倉は明治22年の横須賀線開通により大きく発展していった。西洋文化の流入や知識人の別荘建立・文化人の移住が活発となり開発が進み変貌していった。そのため、鎌倉が変わる前の、未だ江戸末期の名残を色濃く残している明治初期の貴重な実測地図なのである。
もちろん江戸末期と中世の鎌倉では街の様相は異なるであろう。ただし自然に従い、自然の恵みを利用する近代以前の生活は変わらないと思う。
中世都市鎌倉の繁華街は小町大路沿いだといわれている。この古地図でもその名残は見られ、港である和賀江嶋に通じる道沿いに人々が暮らしている。逆に現在観光客でにぎわう小町通りや鎌倉駅周辺は何もなく、近代中葉から賑わう様になったことがわかる。
このように古地図は、現在の鎌倉からは見えなくなってしまった景観を少しおぎなってくれる貴重な資料なのである。
浮田定則
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