鎌倉のとっておき〈第18回〉 鎌倉の名所〜段葛〜
今年の春、鎌倉を代表する名所のひとつである段葛(県指定史跡)がリニューアルされた。若木が植えられ、清々しさを感じさせる。
私は天園ハイキングコースの十王岩横から眺める一直線に海へと伸びる段葛と市街の景色が大好きである。ここに立つとまわりの木々に囲まれた場所とは異なり、風が通り心地がよい。かながわの景勝50選にも選ばれている。
「段葛」の呼び名は江戸時代になってからといわれているのをご存知だろうか。室町時代の歌人、万里集九の詩文集「梅花無尽蔵」では、鎌倉を訪れた際に「千度小路を通り、鶴岡八幡宮に謁する」とある。千度小路は今の段葛を含む若宮大路であろう。七度小路とも呼ばれていた。
そんな段葛の成り立ちについて『吾妻鏡』には「源頼朝は以前から、鶴岡社頭より由比浦に至る曲がった道をまっすぐにしたいと考えていた。ちょうど妻の北条政子が懐妊したので、その御祈りとして頼朝の命令により、政子の父である北条時政をはじめ御家人たちが土石を運んで作った」と記されている。
元々は鶴岡八幡宮から曲がった道が海の方へと続いていたようで、政子の懐妊がなければ今の直線の景色は無かったかもしれない。
それから、政子の父、北条時政も石を運んだとある。今の置石は当然その際のものではないが、娘や産まれてくる孫のために、段葛を作った時政にも思いをはせる事ができる。
今回のようなリニューアルがあると、改めてその歴史的由緒を知るきっかけになる。そして良く知っていると思っている史跡にも、奥深い物語があるのが鎌倉の魅力だ。 浮田定則
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