鎌倉のとっておき 〈第57回〉 鎌倉「路(みち)」めぐり
鎌倉の「路」と言えば、日本の道百選の若宮大路が有名だが、街中には鎌倉の古(いにしえ)を語り、今を映し出す趣きある路も多い。
はじめに鎌倉駅西側、壽福寺付近から六地蔵辺りまで延びる「今小路」。中世鎌倉では、今の御成小学校付近に問注所(裁判所)があり、また佐助川を跨(また)ぐ橋(裁許橋)も架かっていた。特にこの橋は、歌人の西行がよく通っていたとか、源頼朝が橋の上で西行に名を尋ねたとのことから「西行橋」とも呼ばれ、今では石の橋が架けられている。
次に鶴岡八幡宮の東、概ね宝戒寺辺りから本覚寺前を通り、材木座に延びる「小町大路」。当時、和賀江嶋などから荷揚げされた物資は、この大路を通り八幡宮付近の幕府の中心へと運ばれ、鎌倉の経済活動を支えていた。
物流と人で活気に満ちたこの大路では、日蓮上人も法華経の教えを熱心に説いており、妙隆寺と蛭(ひる)子(こ)神社との間には「日蓮上人辻説法跡」も残されている。
そして日々沢山の観光客で賑わう「小町通り」。
明治時代、ここは「瀬戸耕地」と呼ばれた農道だった。明治中期には、鎌倉駅の誕生に伴い街も生まれ、第二次大戦後の高度経済成長と共に店舗も増え、今やカフェやスイーツ、土産物等を楽しめるおしゃれで人気の通りへと変貌を遂げている。
若宮大路の裏路には、ディープな飲食店も連なる古都鎌倉。そぞろ歩きも楽しい、新たな発見も期待できる街である。
石塚裕之
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