鎌倉のとっておき 〈第72回〉 みなと鎌倉(International port)
鎌倉の港といえば、生しらすや新鮮な地魚が水揚される腰越港が思い浮かぶが、その昔鎌倉には、今でいう横浜港や神戸港のような国際貿易港があり、中世鎌倉の経済活動を支えていた。
始めに和賀江島。ここは材木座海岸の東端、相模湾へ200mほど延びた石積みの港で、鎌倉期から江戸期まで、海外や日本各地との交易でにぎわった国際貿易港だ。
1232年、往阿弥陀仏(僧)が幕府の許可を得て、約1カ月で完成したといわれ、港づくりには相模川や酒匂川などの石が使われたという。
材木座に港を開いたのは、広い浜辺があり滑川からも近いため、陸揚げされた文物の整理や建設資材等を街中に運ぶのにも好都合だったからなのだろう。現存する日本最古の築港遺跡であり、青磁器など高価な貿易品の破片を今でも見つけることができる。
次に六浦港(金沢区)。ここは中世鎌倉では鎌倉の東端だった。当時、中国(宋・元)からの文物は、博多港で一旦小・中型船に積み替えられた後、遠浅の和賀江島などで陸揚げされたが、貿易の一層の効率化のため、幕府はこの六浦港を大型船が直接入港できるように整備した。現在の国際貿易港横浜は、まさにこの時誕生していたともいえる。そして港に入った文物は、朝夷奈切通を経て鎌倉中心部に集まっていった。
鎌倉の港は、ここに暮らしここを訪れる人々に、今も昔も豊かなる恵みを与えてくれている。
石塚裕之
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