鎌倉のとっておき 〈第80回〉 国宝を訪ねて
鎌倉には、中世に形づくられた建築物や工芸品、彫刻など魅力的な文化財がひしめくが、その中には「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」、いわゆる「国宝」も数多い。
始めに円覚寺の舎利殿。舎利殿とは仏の遺骨を安置するお堂のことで、元々は西御門にあった尼寺、太平寺の仏殿を移築したものである。急勾配の屋根は日本建築にはない特徴で、室町時代中期、日本最古の唐様(禅宗様)の建築物だ。
円覚寺ではもう一つ、その梵鐘(洪鐘(おおがね))が国宝とされている。1301年の刻銘があり、大旦那(出資者)は9代執権の北条貞時。高さ約2・5m、鎌倉最大の梵鐘だ。
次に建長寺の梵鐘。1255年に建長寺の創建とともに鋳造されたもので、大旦那は5代執権北条時頼、鎌倉時代を代表する梵鐘だ。音色が人の泣き声に似ているとのことから「夜泣き鐘」とも呼ばれている。
そして高徳院の阿弥陀如来坐像。いわずと知れた鎌倉のシンボル「大仏様」だ。元々は木造だったが、大風で倒壊したため、1252年現存する青銅製の仏像造りに着手され、当時の技術の粋を集め、民衆の浄財をもって完成されたという。
これらを含め、鎌倉には絵画や書蹟などあわせて15件の国宝があり、その一部には鎌倉国宝館でお目にかかれる。都市でありながら、大自然と文化財とが見事に調和する古都鎌倉。緑と潮の香、そして文化の薫る心安らぐまちである。
石塚裕之
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