鎌倉のとっておき 〈第103回〉 観音菩薩を訪ねて
寺院の数も100を超える鎌倉では、様々な姿の仏様(像)に出会うことができる。
仏様は大きく分けて、如来、菩薩、天、明王の4つ。如来は悟りを得た人、菩薩は悟りを得るために修行中の人、天や明王は、仏教が生まれる以前からのインドの神々などのことをいう。如来は悟りを得た人なので、我が身を飾りたいとの欲もなく、粗末な衣を纏(まと)っているが、菩薩はまだ完全に悟りを得ていないので、耳飾りや胸飾りなど多くの装飾具を身に着けているのだという。
菩薩の中でも観音菩薩や地蔵菩薩は、悟りを得るために修行をしながらも、人々を救うという役目も持っているとされている。特に観音菩薩は、世間の出来事を観察しながら、救いを求める人々の心に寄り添い、慈悲を与えてくれるという。
鎌倉にも観音菩薩は数多いが、中でも東慶寺の水月観音坐像は、見る人の心に深い癒しと安らぎを与えてくれる仏様ではなかろうか。
この仏様は、鎌倉期の檜の寄木造で、その姿は、観音菩薩の降り立つ所(補陀落山(ふだらくせん))の水辺の岩山に、白衣を纏って寛(くつろ)いで座り、水面に映った月をゆったりと眺めているところだという。こうした姿の仏様は、当時の中国(宋・元)で大流行したものの、日本では鎌倉周辺にしか残っていない貴重なものだという。
多くの仏様が見守ってくれる古都鎌倉。訪れる人々に心の安寧を与えてくれるまちである。
石塚裕之
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