バスケットボール漫画『スラムダンク』の聖地のひとつで、作中で登場する陵南高校の体育館のモデルになったとされる鎌倉高校。その男子バスケ部が、結束力を武器に快進撃を続けた。
昨年11月に開催された神奈川新人戦の西支部予選。強豪もひしめく鎌倉から小田原までの学校50校がしのぎを削った西支部予選で、鎌倉高は初のベスト4入り。他の大会も含め、実に8年ぶりの県大会出場を決めた。
続く県大会では、1月8日に行われた1回戦で横須賀学院に53-92と敗れはしたものの、久しぶりに県の舞台に立ったことで選手たちは自信も得た。キャプテンの梅本伊吹樹さん(2年)は、「うれしかった。県大会に出られたことで、次への課題も見つけることができた。あの1カ月が無駄ではなかった」。
梅本主将が語る"あの1カ月"とは、新型コロナ第5波が続いていた昨年9月のことだ。
高校生活、ずっとコロナ下
先輩が引退し、2年生以下で臨む最初の大きな大会・新人戦を2カ月後に控えた9月。コロナ禍で部活は停止に。丸々1カ月間、全体練習の機会を失った男子バスケ部だったが、オンラインミーティングではこんな意見が出た。「バスケを満足にできずモチベーションが下がってしまうかもしれない。この状況でも、できることがあるんじゃないか」
議論を重ねる中、練習がないことで顔を合わせる機会が減ったチームメイトとのつながりを深めようと、全員参加の動画制作が決まった。
自宅でセルフ撮影
部員たちは授業からの帰宅後や休日を活用し、自宅、近所の公園で各自撮影を進めた。スマートフォンを固定してドリブルやパス、シュートの様子をカメラにおさめ、編集担当の部員・大信田系成さん(2年)へ送信。納得いくプレーができるまで何度も撮り直した部員も。梅本主将からは「テイク15までやりました」と苦笑いがのぞく。
こうして部員たちから集まったカットを、大信田さんが動画制作アプリを駆使してつなぎ合わせた。軽快な音楽にのせた3分の動画には、選手22人、マネージャー6人、さらには今回の動画制作の指導にあたった顧問の安部祐稀教諭(28)らも出演。得意技で魅せるソロ部分や、7人が同じ動きをする演出=写真上=など、メリハリの効いた作品が完成。9月末に部員たちで視聴すると、驚きや称賛に包まれたという。
10月から練習を再開したチームの変化を、マネージャーの英一花さん(2年)はこう語る。「みんなのやる気が上がったと感じた。学年の垣根を越えた会話も増えました」。そして11月、「もっと行ける!」「諦めちゃダメ!」と声を掛け合った鎌倉高男子バスケ部は、8年ぶりに県大会への切符を掴んだ。
部を引っ張る現2年生は、中学卒業前に感染症が国内に襲来し、高校生活は休校や行事中止などコロナに泣かされ続けている。第6波の影響で、1月21日からは再び部活動が短縮された。それでも梅本主将は、「春にはまた県大会で成長した姿を見せたい」と前を向く。動画で深めたチームワークを武器に。
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