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鎌倉 人物風土記

公開日:2022.02.11

鎌倉国宝館の学芸員で『七福神の伝来と鎌倉・藤澤』を上梓した
大江 昭子さん
横浜市在住 58歳

本物の美しさを問う

 ○…3、4歳のころから鎌倉国宝館に行くのが楽しみで、大好きなのは『初江王(しょこうおう)』の仏像。「かっこいい」と子ども心に響いた。小学校に入学しても、同館そばに友だちがいて、鎌倉は「母に毎週連れてこられた街」だった。好きなものはトコトン好きになる気質と自己分析。絵を描くことや見ることが好きで、ピアノやギター、フルートなどの楽器演奏に熱中した。

 ○…大学卒業後、一般企業に入社。美術のセンスをかわれ、色の調合などを担当した。結婚を機に退職するが、日本語教師を務め、活動の範囲を広げていく。しかし、目の病気に罹り、「見えなくなるまでに、”美しいもの”をいっぱい見たい」と、40歳の時に美大を受験し、見事合格した。入学後は「1週間に3回の美術館鑑賞」を自らに課し、その都度、1000字ほどの解説、評論を書き溜めた。

 ○…「どうしても国宝館で働きたい」と学芸員実習を志願。当時の館長に手紙を書き、1週間の実習を受け入れてもらった。やはり1週間では足りず、「もっと勉強したい」と願うと、「お手伝いに来たら」と許可が下り、展示替えなど忙しい時に通い学芸員としての知識を学んだ。そして1年後に正式採用された。「一生懸命勉強して、願えば叶うこともある」。そう思えた瞬間だった。

 ○…藤澤浮世絵館に4年間出向し、ワークショップなどを通して市民との交流を続けた。「堅いサクラの木を版木に使うと、皆さんびっくりする。本物を『見る』『体験する』ことは何事に対しても大切」と実感。美しいものを見るため進学した美大。「作品それ自体も美しいが、作者の思いや鍛錬の道のりが美しい」と気づいた。芸術・文化と市民の懸け橋に邁進する。

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