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鎌倉 社会

公開日:2023.02.10

「イチローさんに会いたくて」
菱沼大輔さん(稲村ガ崎在住)

  • 七里ガ浜のイベントでパフォーマンスする菱沼さん =1月28日

 七里ガ浜で1月28日に開かれたイベント会場で、おもちゃのバットを持った男は静かにいつもの動作を繰り返す。打席に入る際の「ルーティーン」と呼ばれるやつだ。身にまとうユニフォームは、メジャーリーグ「シアトル・マリナーズ」--。イチロー!?

*    *    *

 「イチローさんに会いたくて」。菱沼大輔さん(38)は3年前から、球界のスーパースターのものまねをしている。イチローさんに顔がどことなく似ていることは、昔から自覚していた。新型コロナが日本で猛威を振るい始めた2020年春、髪を短くし、髭の長さや眉毛も本人に寄せてみた。その写真を試しにSNSに投稿すると、多数の『いいね!』とともに、「めっちゃ似ている」とコメントが寄せられた。

 菱沼さんはその後もSNSでの投稿を続け、「コロナで暗いニュースが続いていた。ものまねで苦しんでいる人々を笑わせられるんじゃないか」。地域のイベントや少年野球に参加すると、周りが喜んでくれる。2年前にはテレビのものまね番組に投稿した動画が採用され、お茶の間に流れたこともあった。

 地元スーパーでの仕事の傍ら、地道にアピールを続けていくことで「イチローさんに自分の存在を知ってもらい、いつか会えたらいいな」と菱沼さんは話す。これまでにイチローさんゆかりの場所へ手紙を送ったこともあるが、今のところ反応はない。

苦い思い出が未来の希望に

 顔が似ていると初めて言われたのは中学1年の時。ただ、当時は苦い思い出でしかない。入部した野球部ではイチローさんに似ていることから「(毎朝食べていたと言われる)カレーがやっぱり好きなの?」などとからかわれることが多く、いじめへと発展した。

 「何で似ちゃったのか」。野球は辞め、高校では髪を伸ばして軽音楽部に入り、距離を置いた。またその後の人生は、子どもの頃からの持病によって気分の浮き沈みと闘う日々だ。

 今後もそうかもしれない。それでも、本人に会いたいと夢を描いたことで、「ものまねを通して苦しむ人を勇気づけていきたい」と菱沼さん。今はカレーが大好物だ。

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