鎌倉 文化
公開日:2023.03.31
「俳句ポスト」、その効果は?
寺社や駅前などに20カ所
今回の調査対象は、「俳句ポスト」。俳句ポストは、寺社の敷地や駅前、市役所前など市内20カ所に設置され、ポストの下に用意された投句用紙に俳句を記入し、いつでも誰でも投函できるようになっている。俳句ポストを設置する「鎌倉俳句&ハイク」実行委員会によると、年間投句数は増加傾向にあるという。俳句ポストの設置目的や、取り組みがもたらす効果について探った。
鎌倉俳句&ハイクは、俳人・高浜虚子が多くの名句を生み出した鎌倉の地で、散策しながら四季を詠み、鎌倉の芸術文化と観光振興を図ることが目的だ。2004年にスタートし、鎌倉市、教育委員会、商工会議所、観光協会、鎌倉同人会、市芸術文化振興財団が実行委員会を形成し運営している。
句会などへ作品を提出する際、投句料が必要となるものもあるが、鎌倉俳句&ハイクは無料で応募できる。応募は市内の俳句ポストでの直接投函を原則とし、ウェブなどでは受け付けていない。部門は「一般の部」と15歳以下の「子どもの部」に分かれ、季節ごとに入選句を選定。年に1度は年間大賞を決定し、直近では「凍雲にとどきさうなる鳶一羽」が最優秀賞に輝いた。
年間投句数は、14年度の8879句から徐々に増加し、18年度には1万句を突破。新型コロナで一旦減少も、21年度に再び1万句を超えた。10回ほど応募したという藤沢市在住の神谷章夫さん(71)は、寺巡りなどで鎌倉を訪れた際に投函。俳句は現地で考え、喫茶店に入って用紙に記載しポストへ。入選経験もあり、「鎌倉に行く時の楽しみになっている」(神谷さん)。実行委員会事務局は、「俳句を詠みに鎌倉へ足を運んでもらえたら」と狙いを語る。
国語の授業で活用
地元の腰越小学校では、3〜6年生の国語の授業で、鎌倉俳句&ハイクを活用する。学区内で感じた季節の良さを俳句で表現することで、言葉や季語の使い方を学んでいく。入選した児童は校内で表彰され、俳句を学校だよりに掲載。3年生のクラス担任は、「感性や表現の仕方を学ぶことで、言葉を選ぶセンスが養われる。題材を見つける過程では、地域の良さを知るきっかけにもなる」と話し、学習の効果を実感している。
昨秋入選した中丸湊士君(5年)は、近所で遊んでいた時に見つけたトンボの様子を題材に、「ゆうぐれに池にあつまるトンボたち」を創作した。「入選できてうれしかったので、また機会があれば応募したい」(中丸君)
他自治体や企業でも
観光振興を目的とする鎌倉市に対し、正岡子規など著名な俳人を輩出した愛媛県松山市では、俳句の文化普及を目的に同様のポストを設置している。市内のほか、県外、さらには海外にも松山市の俳句ポストを設置し、ウェブでの応募も受け付けるなど俳句文化の裾野拡大を目指す。投句数はここ数年増加傾向で、ポストとウェブ合わせて年間約5万2千句。松山市は、投句料が無料で初心者でも参加しやすいことや、俳句を扱うテレビ番組『プレバト‼』(TBS)の効果で俳句ファンが増えていることを要因に挙げる。
今や世界屈指の緑茶販売数を誇る「お〜いお茶」の(株)伊藤園は、商品の認知度アップによる売上拡大を目的に、新俳句大賞を24年前に開始。集まった作品の中から入選作を決め、ペットボトルなどの商品ラベルで紹介する。応募は年間約200万句。学校の授業にも活用され、応募者の約9割を小・中・高校生が占める。同社広報担当は、「自分の名前が載って記念になったり、応募して商品に愛着が沸いたりすることで、購入につながっているのでは」と話す。
応募の95%が市外から
鎌倉俳句&ハイクの居住地別投句者の割合(2014〜18年度発表)は、県外を含めた市外からが95%を占め、市内は4%ほど。観光客や遠足・修学旅行で訪れた児童と学生が、応募数を底上げしている。実行委員会事務局は、「最近は20代の投句も増えている印象がある」と話し、子どもから高齢者まで幅広い世代が俳句に親しんでいることが伺える。
年間の応募数は1万句を超え、鎌倉の観光振興を後押しする俳句&ハイク。「花誘う俳句に魅せられ古都訪ね」―。
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