市内赤松町在住の滝沢喜美さん(89)がこのほど、エッセーと短歌集『ありがとう』を神奈川新聞社から出版した。
波乱の前半生
満州鉄道の技術者だった父の仕事の関係で、現在の北朝鮮で生まれ育った滝沢さん。戦後の混乱に巻き込まれ、帰国できたのは終戦から2年たった1947年だった。
父の故郷である長野県で過ごした青春時代。高校では生徒会長も務めるなど才気煥発で、女性の大学進学は珍しいなか、恩師のすすめで奈良県の女子大を受験。見事合格した。
しかし結核と診断されたことで入学を断念し、公務員として働いた。
その後、22歳で夫・修一さんと結婚。忙しい夫を支えながら、2男1女の子育てに慌ただしい日々を送った。
そんな滝沢さんが短歌を始めたのは40代半ば。何気ない日常の風景や季節の移り変わりから受けた情感を、三十一音に乗せることが「心の癒し」になってきたという。
90歳前に執筆
今回の著作は来年90歳という節目を迎えることをきっかけに書き出したもの。
6年前には心臓の病気で開胸手術を経験し、91歳となった修一さんも肺がんを患うなど、夫婦ともに健康面の不安も出てきたことで、これまでの人生を振り返ることを決意したという。
『ありがとう』には、作りためた短歌を収めたほか、尊敬する父親のこと、戦争体験や帰国後の苦労、家族の病気などもエッセー形式でつづっている。
そして最終章は家族に当てた「遺言」ともとれる内容。「いつ何があるか分からない。これまで出会った全ての人に感謝を伝えられたら」と滝沢さんは話す。
とは言え、まだまだ気力も体力も充実。毎日の散歩の際には必ずスマートフォンを持ち歩いて風景を撮影し、日々の短歌づくりに活用している。「もしかしたら100歳の記念に次回作を出すかも」と笑った。
若干数の配布が可能。希望者は豊田さん【携帯電話】090・3161・1354へ連絡を。
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