茅ヶ崎市役所本庁舎3階に、2匹のカエルが暮らしている。本来は「国内外来種」として駆除されるはずだったが、わけあって今はこの場所を終の棲家に静かな余生を送る。その数奇な運命が語りかけるものとは―。
2匹は今年6月、市北部の丘陵地帯で発見された。モリアオガエルという本州や佐渡島などに広く分布する在来種で、オスと見られる。
実はこのカエル、茅ヶ崎にはもともと生息していない種で、市内で初めて発見されたのは13年前。市景観みどり課では「飼育していたものが逃げ出したか、捨てられたのでは」と推測する。
国内の生物だったとしても、もともとその地域に生息していなかった種は「国内外来種」となる。2匹も卵塊(モリアオガエルが木の上などに産み付ける泡状の卵)の駆除作業中にボランティアが捕獲し、同課に引き渡された。
職員は「当初は『駆除』する予定で、ケースに入れたままエサなども与えていませんでした。でも、たくましく生き続ける姿を見ていたら、どうしてもできなかった」と市役所内で保護することになった。
関西出身、茅ヶ崎育ち
その後は環境フェアなどのイベントに出張しては「国内外来種」について啓発している2匹。専門家に遺伝子解析を依頼したところ、岡山や京都に生息する種だと分かった。近年はインターネットなどでも簡単に手に入ることから、持ち込まれ茅ヶ崎で繁殖したと見られる。
同課職員は「食欲は旺盛で生命力も強い。駆除作業は続けているが、明確に個体数は減っておらず、このままでは在来生物と競合し、生態系に影響が出てしまう」とし「外来種は『入れない』『捨てない』『拡げない』が原則。飼い始めたら最後まで責任をもってほしい」と呼びかける。
2匹の今後について「このような環境で冬眠することはほとんどなく、冬を越えることは難しいと思う」と同課職員。「今年も多くの外来種を駆除してきた。彼らだけ保護していることは本当に正しかったのか、ずっと考えています」と目を伏せる。
今は外来種のコオロギなどを与えられ元気に過ごしているが、静かに「最期」を待つ2匹。そのつぶらな瞳は、人と自然との関わりについて、深いメッセージを発している。
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