5月28日から美術館で写真展「富士と雲」を開催する 杢代(もくだい) 新一さん 豊原町在住 80歳
感動を写すということ
○…五十余年、数十万枚―。日本と世界の山々を撮る写真家が、「富士山と雲」をテーマに美術館で写真展を開く。季節、時間帯、雲の表情、どれをとっても二枚と同じ写真はない。展示作品は「直感で選んだ。良いなって気に入ったものを。雲があれば山頂が見えなくてもいい」。歩き回って、時にはじっと待って、眼前に広がった光景に与えられた感動を写してきた。
○…平塚で生まれ育ち、高校卒業後、平塚信用金庫に就職。10代で丹沢ブームに乗っかり山登りをはじめ、そのうちに富士山を撮りたくなった。20代半ば、カメラは借り、フィルムだけ買って撮りに行った。その後、知人から山岳写真の岡田紅陽氏を紹介される。心に残る師の言葉は「写真は何で撮るんだね」。答えは高性能カメラ、大きなレンズ、高解像度のフィルムではなく「写真は心で撮れ。自分が感動しなければ人に伝わらない。感動を写真にするんだ」。
○…「登って撮れるのは若いうちだけ」と58歳で早期退職し世界を巡った。写真はその場所に行かなければ撮れない。「写真は結果。現物はもっと素晴らしい。いい一瞬に立ち会えた時に、自然はいいなと思う。刻々と変わる光、雲の流れ、その一瞬を見られるのは幸せ」と語る。心動かされた瞬間を写すこの行為は、岡田氏の言葉そのものだ。
○…いつまで撮るかと問うと、世界を歩いたその脚をポンッと叩いて「この脚が使える限りは」ときっぱり。70歳からロードバイクに乗り、大会で80Kmを走破する衰え知らずの体力で発信したいのはアメリカの山々。山岳写真界では陽の当たらない場所だからこそ、ここ数年のライフワークとしてきた。「ダイヤモンドに、逆さ。富士山は皆が撮るでしょう。人が撮らないものを撮った方がいいなってね」と笑った。
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