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日本国憲法の制定過程から学ぶ 憲法第10条と大磯の澤田美喜 〈寄稿〉文/小川光夫 No.72

公開:2011年6月10日

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 当初、総司令部が第一生命ビルの6階で憲法草案を作成していたときには、民政局の人権条項を担当していたロウストやベアテ・シロタ達は現在の憲法第14条の二項に「外国人は平等の法的扱いを享有する権利を有する」という条文を置いていた。しかしその条文は、日本政府に示された後に、内閣法制局の佐藤達夫などが日本の家族制度の崩壊を恐れて削除してしまった。また現在の第10条「日本国民たる要件は、法律で定める」という条文は、明治憲法の「臣民権利義務」の最初の第18条に示されていたもので、総司令部案にはなかったものである。日本政府が何故にGHQ案(第14条二項)を削除し明治憲法第18条を加えたのであろうか。

 衆議院の本会議で北昤吉議員が、それは明治憲法でも条文化されており、何故それを日本国憲法においても条文化しないのかと質問したことから、新たに条文の中に付け加えられることになる。憲法第10条の規定は、何ら重要な意味を持たないような気がするが、しかしこれは在日朝鮮人や米兵との間で生まれた混血児などを差別する大きな要因となった。この条文が内に秘めていたものは外国人差別であり、後の国籍法や外国人登録法などの法的根拠となっていたことを考えると大変な差別条項であった、と言わざるを得ない。

 1984年5月の参議院の本会議で国籍法、戸籍法の改正が可決するまで、国際結婚によって生まれた子供達は、父が日本人でなければ日本国籍を有することができなかった。また、日本に1年以上の間滞在する16歳以上の外国人についても1999年までは氏名・国籍・生年月日の記載のほか、特別に指紋の押捺が義務づけられていた。

 ところで、当時の日本では女性差別が公然と行なわれており、本妻の家に妾が同居していることは珍しくなかった。三木武吉議員が「妾は5人いるようですが?」というマスコミのインタビューに「6人いるよ」と平然で述べることができた時代でもあった。

 戦後の占領下で米兵によって一般女性が強姦されることを懸念して、旧日本軍がアジアで慰安所を設置したように日本政府も特殊慰安施設協会(RAA)の設置を決め、米兵のための売春宿の公婦を募集した。その売春宿は、赤線地帯と呼ばれ何万という女性が雇われることになる。また東京など大都市には4万人を超えるストリートガールやパンパンと呼ばれる外国人相手の女性がいた。その中には戦災で夫や父親、兄弟などを失った女性達の中にも、生きるために身体を売って生活することを余儀なくされた女性や、米兵などとの恋に落ちた女性も数多くいた。当然、米兵などとの間に多数の混血児が生まれることになるが、当時の日本社会では、混血児を産み育てることは恥じるべきこととされており、法律的にも日本人として認められていなかった。混血児を産んだ日本女性は、我が子を思う気持ちと、日本社会に充満していた差別意識の中で苦悩の日々を送ることになる。こうした女性や混血児に救いの手を差し伸べたのが大磯の澤田美喜であった。しかしその彼女の無条件の発露を政府は勿論のこと、地域の住民でさえも理解しようとはしなかった。
 

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