大磯・二宮・中井版 掲載号:2012年6月15日号
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二宮ゆかりの画家 連載第5回 二見利節(としとき)・その生涯

 こうして新人として画壇に認められるようになった利次は、東京への行き来も数多くなり、千疋屋を訪ねる回数も増してきた。沢崎節子の存在である。昭和九年、第十二回春陽展には「烏山風景」を出品している。また九月には「沢崎節子」(十号)を描き、大切に物置小屋のアトリエに保管していた。昭和三十一年三月十六日の出火でアトリエが全焼した折、積み重ねられた絵の中にあったおかげで、周囲を焼け焦がしただけで消失を免れた。それは現在、平塚市の博物館(現在は美術館)に保存されている。

東京生活

 昭和十年、東京での生活が始まった。画友との共同生活である。働きながら画業に邁進のためである。ところが昭和十一年の初めごろ相思の仲であった節子の死を知らされ、悲嘆の極みに達して二宮に帰って来てしまった。

 このときから画号を利次から利節と改めたのである。

春陽会賞受賞・文展特選

 昭和十三年に入ると春陽展に出品のため製作に取りかかった。物置小屋のアトリエの生活は寝る暇も惜しむほどだったと聞いている。

 ある日突然絵道具を抱えた利節が現れた。「暇か」という。「どこへ行く」と問うと、「試験場へ行くんだ」との返事、そして「いっしょに付き合え」という彼は、一人でまずいときは必ず誘いに来るくせがある。「じゃあ行こう」と二人で試験場に向かった。正門を入ってまっすぐな道を歩いて右に曲がろうとしたとき、畑の中の温室目がけて駆け出してしまった。「ここだここだ」という。行ってみると、温室の中に入って、道具を広げている。「この牡丹だよ」。そこには鉢植えの牡丹が根元から二枝に分かれて真っ白な花が一個ずつ咲いていた。「みごとだなあ」というと、「いいだろう」とまるで自分のもののような口ぶりで答えてくる。ところで、「ここには責任者が居るはずだ、頼んで来たか」というと「入選したら絵葉書の一枚も送ればいいよ」と軽い返事だ。なるほど二人で居ると気強かったのだろう。数日して二見から連絡があって絵ができ上がって、近く東京に持って行く、早く見に来いという。例の物置小屋のアトリエである。中に入ると裸電球の光の中に真っ白な花を付けた牡丹が、彼独特の渋いバックの中にくっきりと浮かび上がっていた。「うまく描けたなあ」というこちらの声に「俺も気に入っているんだ」と答えが返ってきた。横を見ると牡丹の三倍もある画があった。法被を着た傘職人が傘骨に紙を張っている絵だ。「傘という奴は四角な紙を張るものかなあ」というと、「実は俺も見たことが無い。でも紙を四角にしないと絵にならないんだ」。こうして、この二点が出品されて入選、春陽会賞を受賞したのである。これらの絵も自家製の例のカンバスに描かれ、自家製の額縁に納められていたのである。こうして春陽会に若手作家として認められ始めた利節は精進に精進を続けた。
 

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