大磯・二宮・中井版 掲載号:2022年1月14日号 エリアトップへ

大磯歴史語り〈財閥編〉 第33回「安田善次郎【1】」文・武井久江

掲載号:2022年1月14日号

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富山駅前の明治安田生命ビル
富山駅前の明治安田生命ビル

 今回から、四財閥・安田善次郎を語ります。彼の別荘は大磯町の王城山西側の中腹にありました。現在は安田不動産・大磯寮になっています。一般公開はありませんが、年に2回から3回、観光協会主催のイベントで公開されます。楽しみにして下さい。

 四財閥は二つに分けられます。三井・住友は代々の家系を継いでの財閥でしたが、三菱・安田は初代が一代で築いた財閥です。その中でも、安田善次郎は一代で築いた資産がけた外れの人で、わが国の歴史の中でも空前絶後と言われています。彼が亡くなった大正10年(1921)当時の資産は2億円を超えていました。これが何故凄いかというと、エリート官僚の初任給が70円程度だった時代で、更にその年の国家予算が15億9千百万円、実に国家予算の8分の1に相当する富だったからです。現在で例えると、長者番付1位にソフトバンク・孫正義(5兆1392億円)、2位ユニクロ・柳井正、昨年の国家予算が106兆円(一般会計)、現在と比べるのは違うかもしれませんが、孫さんの資産で約20分の1、凄かったイメージは湧くと思います。何故こんな事を書いたかというと、彼は世間から不可解な人とされていました。彼の発想と行動は中々凡人には理解されず、生前はおろか現在に至るまで「ケチ」の一言で片づけられています。彼は、周囲に自分の生き方を理解してもらおうとした形跡が殆どありませんでした(晩年に富之礎・意志の力という啓蒙書が見つかりました)。更に父・善悦の教えから、常日頃「陰徳を積む」を信条とし、良い事ほど人様に解らないように、自分が如何に社会に貢献しているかを誇る事はありませんでした。そのために誤解を生み、悲劇的な死を迎える事になりました。そんな彼の生き様をお話していきます。彼の生誕地の富山に行ってきました時のお話も含めて、何故こんな生き方が出来たのか、皆様にも知って頂きたいです。今からでも、億万長者になりたい方は、彼の生き様を真似てみて下さい。

 富山駅前にある明治安田生命のビルの2階が記念館になっています。彼は、天保9年(1838)10月9日生まれ、婦負(ねい)郡富山町の鍋屋小路に父・善悦、母・千代の三男として生まれました。父・善悦は勤勉な人で、質素倹約を旨として、こつこつ働いて少しずつお金を貯めて資産家となりました。この地方の方言で資産家を「鍋のふた」と言ったそうです。善悦は「鍋屋小路の鍋のふた」と呼ばれていました。そんな父に育てられた彼のお話を綴ります。(敬称略)

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