大磯・二宮・中井 コラム
公開日:2023.07.14
大磯歴史語り〈財閥編〉
第64回「浅野総一郎【14】」〈敬称略〉 文・武井久江
前号の続きを少し。「日本で初の西洋式公衆便所」は前年に、神奈川県知事の野村靖からの依頼でした。「君はいつも、『大根の切れ端でも漬物になる。この世の中で利用価値のないものはない。自分は廃物利用の天才だ』と自慢しているね。うちでは糞尿を、百姓が取りに来ず、溜まって困っている。石炭の残滓(ざんし)のコークスよりは少し多めに払うから、引き取ってくれないか」総一郎は答えました。「コークスもそうですが、大量に集めないと燃料になりません。野村さんの家の糞尿だけでは、せいぜい農家と野菜を交換するぐらいでは」では大量に集めるとは?が、公衆便所の設置の話に繋がりました。
県からの依頼で市内63か所の設置で約2000円かかると申請したところ県は財政が厳しく払えない(県からの要請なのに?)一時決裂しますが、さすがに県の衛生局長から打開策が提案されました。設置費用は、総一郎に県が貸し付けるが、糞尿を農家に売却する権利は、総一郎に与えるという申し入れです。それならやりましょうと、明治12年に一斉に始まったのです。
その後の糞尿処理は、横浜・高島町の業者が月350円で引き取りたい、月350円ならわずか半年で県からの借金2000円を返済できる、その後は丸儲けだ。これが「横浜を清潔にした男」のお話です。(笑)
次はコークスとコールタールの2つの廃物ですが、コークスはすぐ道筋が見つかりました。コールタールは中々利用法が見つかりませんでしたが、コークスで儲けさせて頂いたので、横浜瓦斯局から引き取る契約を結びます。5年契約で5000円です。
そんな時、中華街を歩いていると、コールタールの利用法が見つかります。鉄に塗るとさび止め・木に塗ると防腐剤・そんな事からやっと活路を見出すことできました。
これからという時に又、神奈川県の役人が浅野宅を訪れます。コレラが流行して消毒用の石炭酸が無くなって困っている、君が契約したコールタールを、無償で県に譲ってほしい。びっくり、本当に県って凄いですね、一般企業ではありえない。そんな中、総一郎は掛け合います。でも役人は、「人命が最優先だ、無償は困ると言っても、一般市民を見殺しには出来ないのだから無償で譲ってほしい」の一点張り、困った。考えてみれば、皮肉なことで総一郎が医者を辞めた理由が、コレラに対して、医者という職業の無力感からでした。
私も商売人です、ただという訳にはいきません、衛生局所長が幾らなら譲るかということで、1樽5円で話が決まりました。結構な高値です。
では次回はセメント業に進出です。
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