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小田原・箱根・湯河原・真鶴 人物風土記

公開日:2013.06.15

ドイツで「ヒカリトロニカクリエイター」として活躍するフルート奏者
鈴木 美緒さん
市内出身 29歳

輝く一瞬を奏でる



 ○…電子音の旋律に、美しいフルートの音色が重なる。光を表現した電子音とフルートで奏でられる「ヒカリトロニカ」という独自のジャンルは、留学先のドイツで生まれた。小学4年で出会ったフルート。両親が市民会館で観た、山形由美さんのコンサートがきっかけだった。音大卒業後、養護学校の臨時教員などをしながら鍛錬を積み、クラシックをもっと深く勉強したいと、昨年4月に日本を発った。



 ○…連日通うドイツのカフェで出会った電子音楽。めまぐるしく変化する音と機械的なメロディーを「クラシック楽器で表現してみたい」とパソコンに向かい始めた。作曲するときはアーティストの自分と、普段の自分をスイッチで切り替える。不眠不休で曲を生み出す源は「生きていくために必死になって、自分を高めるチャンスだから」という強い意志からだ。



 ○…気分転換は台所でのひととき。計る、混ぜる、焼く…単純作業の繰り返しが、落ち着く時間なのだとか。だけど「とってもそそっかしい」。ライブ直前に包丁で指を切り、絆創膏を巻いてステージに立ったことも。「お客さんからは見えなくて良かったけれど、気づいたらフルートが血で滑って。転ぶ、つまづくは日常茶飯事」と端正な顔だちにはにかみが浮かんだ。



 ○…振り返れば引っ込み思案だった性格を変えたのは自分自身。ボランティアで子どもたちと触れ合いながら、夢を持ち、一歩踏み出すことの大切さを伝えてきた。だがある日気づく。「それは『自分に対して投げかけていたメッセージ』だって」。自分の目指す音楽を見失ったとき、尊敬するアーティストからかけられた「体と音が共鳴していない」と言う言葉を今も胸に刻む。「代わりがきかない『自分』でいたい。そしてかつての教え子たちに、広い世界と、夢を見ることを伝えたい」。力強く言いきって前を見据える瞳に、もう迷いはない。

 

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